Last Updated on 2025年6月26日 by 成田滋
さきの都議選挙を前にして、各党は独自に調査をしていました。結果として調査結果は外れました。その代表が自民党の調査結果と見通しです。投票前では、発信力のある小泉農林水産大臣の備蓄米の随意契約による米価の引き下げ、物価上昇の対策として、国民一人当たり2万円を給付するという発表により、自民党の勢いが上昇しているという予想が流れていました。「政治と金」は、陰が薄くなったという見通しを立てていたようです。独自調査の予測は大きく外れて30議席を21議席に減らす惨敗となりました。
政党はRDD方式などの電話調査やインターネット調査を使っていますが、回答率の低下やサンプルの偏りが問題になります。特に固定電話を使った調査では、若年層や都市部の単身者が抜け落ちやすくなります。近年の選挙では「無党派層」が多く、直前まで投票先を決めない人が増えている傾向があります。そのため、調査時点ではある党を支持していたが、実際の投票日には他党に入れた、という動きが起こりやすいです。
情勢報道による“勝ち馬効果”や“同情票”があったことも分かります。報道によって「この党は優勢」「この党は厳しい」と印象づけられると、有権者の行動が変わるのです。勝ちそうな党に乗るとか、劣勢な党をあえて応援するというのが投票行動です。有権者が本音を言わない、いわゆる「隠れ票:シャイボーター(shy voter)」の存在もあります。たとえば、特定の党や候補を支持していても、それを公言しづらい空気がある場合、調査では「支持しない」と答えることがあります。組織票の読み違いもあります。特定の団体が支援する候補は、実際には確実な組織票を持っていても、調査ではそれが反映されにくいことがあります。組織票の高齢化が響いた党もあります。逆に組織の力が過信されて、期待外れになるケースもあります。
結論として言えることは、事前調査と実際の結果のズレは、調査手法という技術的な問題と有権者の行動や報道の影響という社会的・心理的な要因が複雑に絡み合っています。選挙情勢は特に直前になって大きく変わることがあるため、調査を過信せず、柔軟に情勢を見る必要があります。もっと言えば、手前味噌の調査は当てにならないということです。結果が予測とはずれた理由は、調査の基本である選び方(サンプリング)を無作為に行わなかったこと、これに尽きます。
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