留学の奨め その10 アメリカ大学への留学生の増加

Last Updated on 2025年1月31日 by 成田滋

アメリカのシンクタンク(think tank)、国際教育研究所(Institute of International Education: IIE)が発表した2013〜14年度のアメリカの大学や大学院への留学生の統計は興味深い。国際教育研究所はフルブライト財団の支援によるFulbright Programを主宰したり、国内外の留学生を支援する、いわばアメリカにおける国際交流教育の旗艦組織である。

研究所の統計によると前年度と比較して8.1%増の約88万6千人で、留学生の総数は1,107万5千人であるという。アメリカは留学生で支えられているといってよいほどの数字である。率直にいってアメリカの大学への留学はやはり高い人気があるという印象である。その理由は何かである。

国別の留学生の数だが、第1位は5年連続して中国人で、27万4千人とあり、これは前年の16.5%の伸びで留学生全体の31%を占めた。第二位はインドで10万3千人の6.1%の伸び、第三位は韓国となっている。日本からは1万9千人。前年度より6.2%減っている。この減少は9年連続して続いている。1990年後半、留学生のピークだった頃と較べで半減してしまった。留学生の増加の伸びでいえば、最高はサウジアラビア(Saudi Arabia)からの留学生の伸びが21%で5万4千人となっている。ブラジル(Brazil)、クエート(Kuwait)からの留学生も大幅に増えている。この理由は国費留学生の増加であるいわれる。

アメリカの大学で留学生が増加する第一の理由は、優れた高等教育を受けられる環境があるからである。留学中に学位を取得すれば、自国に帰ったときその身分が優遇され、地位や高所得が約束されている場合が多い。今も留学は大きなステイタスとなっている。

第二は派遣先の国内で、高等教育機関を十分な早さで設置できないなど、人材養成が追いつかず、そのために留学生が増えているという状況である。若者の向学心を満たす教育や研究環境が不十分ということだろう。

第三はアメリカは伝統的に留学生の出身国がどこであれ歓迎するという姿勢をとっていることである。中国やインドだけでなく、キューバ(Cuba)やイラン(Iran)、ベネズエラ(Venezuela)からもたくさんの留学生を迎え入れている。しかも留学生の授業料は高い。大学にとっては大事な収入源ともなっている。

アメリカとの外交関係が緊迫した状態にある国からもアメリカには留学生が押し寄せている。国際間の緊張が続くとはいえ、留学生を受け入れる体制、例えば人権の尊重、政教の分離、安全が整っているからだと考えられる。ベネズエラは共和制社会主義国家で、かつてウゴ・チャベス(Hugo Chavez)政権は強力な反米路線をとったことで知られた。フィデル・カストロ(Fidel Castro)に率いられたキューバもそうであった。

大学は、国と国との関係がどうあろうと、やってきたいという者を受け入れると姿勢が見られる。そうした多様性を重視することが大学を活性化させる源であることを認識している。

このところ日本人の留学への意識が変化しているようである。留学の資金がないということが主であろうが、これはここ30年以上続いたデフレによる所得の停滞、消費税の増税などによる国民生活の影響が大きいと考えられる。それと若い人々の留学への志向意欲の減退があるのではないか。政府、自治体、民間団体、企業などはいろいろな奨学金制度を設けている。それを積極的に探し、応募する姿勢が欲しいものだ。

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