行動科学における単一事例実験(Single-Case Experimental Design: SCED)の内的妥当性(internal validity) とは、変化させたい標的行動の変化が、他の要因ではなく、行われた介入によって確かに生じたと言い切れる度合い」のことである。通常の実験群と統制群を分ける集団比較デザインとは異なり、一人の対象者を継続的に観察するため、特有の考え方をとる。
単一事例実験には内的妥当性を脅かす主な要因がある。単一事例実験では、時間の経過とともにデータが収集されるため、以下のような「介入以外の理由」で行動が変わってしまう外来変数となるリスクを排除する必要がある。
・環境(History): 実験期間中に、たまたま家庭環境が変わったり、別の習い事を始めたりするなど、外部の出来事が影響すること。
・成熟(Maturation): 時間の経過とともに、本人が自然に成長したり、体力がついたり、あるいは疲れたりして行動が変わること。
・検査(Testing): 何度も同じ測定を繰り返すうちに、本人に「慣れ」や「コツ」が生じてしまうこと。
・順序効果(Sequence effects): 複数の介入を行う場合、前の介入の影響が残ってしまうこと。
内的妥当性を高めるための工夫が必要となる。単一事例実験では、「再現(Replication)」という論理を用いて、上記の要因を論理的に排除し、以下のような方法で内的妥当性を証明する。
基礎線(ベースライン)の安定
介入を始める前の行動(A期)を一定期間測定し、その行動が安定している、あるいは介入とは逆の方向に動いていることを確認する。これにより「放っておいても良くなったわけではない」という予測の根拠を作る。
実験的制御(Experimental Control)
特定のタイミングで介入を導入し、それに伴って行動が劇的に変化することを示す。これを以下のデザインなどで繰り返し確認する。
反転デザイン(ABABデザイン):
介入をやめたら元に戻り、再度介入したらまた良くなることを示すことで、「介入があった時だけ変化する」という因果関係を証明する。
多重基礎線デザイン(Multiple Baseline Design):
異なる場面や異なる行動に対して、介入のタイミングをずらして導入する。介入を開始した箇所から順番に行動が変わっていく様子を示すことで、環境や成熟といった偶然の影響を否定する。
内的妥当性の判断基準として視覚的分析がある。単一事例実験では、統計的な有意差検定よりも、グラフを用いた視覚的分析が重視される。以下のポイントが明確であれば、内的妥当性が高いと判断される。
・水準の変化: 介入直後にデータの高さがガクンと変わったか。
・勾配(トレンド)の変化: 行動の増減の勢いが変わったか。
・即時性: 介入してすぐに変化が現れたか。
・重なり(Overlap): 介入前と介入後のデータが重なっていないか。
まとめとして、単一事例実験における内的妥当性とは、「その変化が介入によるものであるという証拠の強さ」である。これを担保するために、実験者は「測る時期をずらす」「介入を一度引いてみる」といった手続きを踏み、偶然の結果ではないことを証明しようとする。

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