質問:諸外国での強度行動障害児、者への教育や療育の状況を教えてください。特に北欧やアメリカではどのように公教育で対応していますか。
回答:諸外国、特にアメリカや北欧における「強度行動障害(Challenging Behavior)」への対応は、日本とはアプローチの出発点が異なります。日本では「障害特性による激しい行動」という状態像に注目しますが、欧米では「環境や支援とのミスマッチによって生じる行動」**と捉え、ポジティブな行動支援(Positive Behavioral Supports: PBS)を軸に据えるのが一般的です。
1. アメリカ:徹底した「個別化」と「科学的根拠」
アメリカの公教育(K-12)では、IDEA(障害者教育法)に基づき、強度の行動障害がある子どもに対しても手厚い法的保障があります。つまりすべての子どもに無償で適切な教育(Free Appropriate Public Education: FAPE)が保障され、その実装が個別教育計画(Individualized Education Program: IEP)とか行動介入計画(Behavior Intervention PLan: BIP)となっています。
重要な視点としては、行動問題も「教育ニーズ」として扱い、学習や行動、社会性を一体で支援するというものです。そこには、保護者もチームの一員となることです。重度の行動問題に対しては、積極的な行動支援(Positive Behavioral Support: PBS)と応用行動分析(Applied Behavior Analysis: ABAが主流となっています。問題行動を「罰する」のではなく原因(環境・感覚・コミュニケーション)を分析して予防することです。応用行動分析では、行動を機能分析しデータに基づく介入代替を採用して行動を教えるのです。積極的な行動支援は、学校全体で「良い行動を褒め、環境を整える」仕組みが導入されており、全米の多くの公立校で標準化されてい
行動の機能分析しでは、機能的行動アセスメント(Functional Behavior Assessment: FBA)を行い、問題行動が起きた際、なぜその行動が起きるのか(要求、回避、注目など)を科学的に分析することが法律で義務付けられています。行動介入計画では、分析に基づき、個別の教育プログラムの一部として具体的な支援計画を作成します。単に「止める」のではなく「代替行動を教える」ことに主眼を置きます。
行動介入計画を担当するのは、認定行動分析士(Board Certified Behavior Analyst: BCBA)といった専門職が学校現場に入り、教員と連携して直接介入を行う体制が整っています。
2. 北欧(スウェーデン・デンマーク等):生活の質(Quality of Life: QOL)と「ノーマライゼーション」
北欧諸国では、特別な教育機関に隔離するのではなく、「地域社会の中でいかに普通に暮らすか」という理念が徹底されています。
パニックや自傷を防ぐため、物理的な環境(光、音、動線)を徹底的に配慮した「スヌーズレン」のようなリラックス空間や、構造化された環境が公教育の中にも組み込まれています。いわゆる低刺激な環境デザインという考え方です。子どもと支援者との対立を避ける低拘束(Low Arousal)アプローチが主流です。支援者は威圧感を与えず、本人の興奮を鎮める技術を習得しています。
北欧では、学校卒業後も、グループホームや日中活動施設での支援が途切れないよう、自治体が責任を持って「パーソナル・アシスタント」を派遣する制度が充実しています。いわゆる学校から実社会をつなげるライフサイクル支援という考え方です。
アメリカや北欧諸国に共通する最新のトレンドについてです。現在、欧米で共通して重視されているのは「TEACCH」や応用行動分析の知見をベースにしつつ、本人の意思決定を尊重する「自己決定支援」です。「困った行動をする子」ではなく「困っている子」として捉える視点が、公教育の根底に流れていることです。

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