無関心や傍観の帰結 その七 『白薔薇は散らず』 最後のビラ その2

Last Updated on 2025年6月14日 by 成田滋

「白薔薇は散らず」において大学生らが書いた反戦のビラの内容は、神々しいほど格調高く、訴えかけるものです。「消極的抵抗」と呼んでいた彼らの言葉は、武器蜂起の弾丸や暴力以上の威力を持っているようです。「悪い政府をもった国民ほど、憐れなものはない」、「世界中で最も優秀な民族で、他国民はドイツに従うのが当然で劣等民族なのだ」という、当時の国家社会主義のスローガンに言論で次のように反論し、反旗を翻すのです。

大学にまかれた白薔薇通信のチラシ
Sophie Sholl und Hans Scholl

 われわれにとって、合い言葉は唯一である。党と戦うこと!われわれをなお、唖とし沈黙せしめるかの党組織から離脱せよ!親衛隊の上級また下級幹部と党に追従する者らの演壇に背を向けよ!われわれの関心事は真正の学問と純粋な良心の自由である!いかなる嚇かし道具もわれわれを畏怖させることはない、たとえ大学封鎖をもってしても、われわれ各個人の戦いにわれわれの未来、道義的責任を自覚する国民内でのわれわれの自由と名誉とがかかっているからである。

 自由と名誉!10年の久しきにわたってヒトラーとその徒党がこの二つの光栄あるドイツ語を圧搾し脱穀し歪曲すること、一国民の最高価値を豚の群れに投げあたえるディレッタントのみがなし得ることであった。彼らにとり自由と名誉が何を意味するかは、ドイツ民族のすべての物質的精神的自由とすべての道義的本質とを破壊せるこの10年間に十分示されたことである。いかに愚味なドイツ人といえども、彼らがドイツ国民の自由と名誉の名において全ヨーロッパに建立し、また現に建立しつつある怖ろしき血の噴泉によって、今や眼は開かれたのである。

 ドイツの名は永久に恥辱として残るであろう、もしドイツの青年がついに立ち上がり復讐と贖罪をを同時に果たし、加害者を踏みにじり、新しき精神的ヨーロッパを建設することをせぬならば、女子学生諸君!男子学生諸君!われわれにドイツ民族の目は注がれている!国民はわれわれに1823年ナポレオン戦役(Napoleonic Wars)の時とひとしく、1943年にはナチス的恐怖を精神の力で打破することを期待しているのだ。今や東なるベレシナ(Bjaresina)とスターリングラード(Stalingrad)に焔うずまき、スターリングラードの死者たちはわれわれに嘆願の声をおくる!「いざ進めわが民よ、のろしの煙は立ち昇る!」

 わが民族は国家社会主義によるヨーロッパの奴隷化に抗して、進軍を開始せんとする、自由と名誉の新しき信念に身をたぎらせつつ。

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