教職員の不祥事を考える

最近、学校教師の不祥事が報道されています。子どもの情報の紛失、教室などでの盗撮です。2025年8月には、栃木県の高校教諭の男が、学校内に設置した小型カメラで盗撮したなどとして逮捕されました。校内からは20台以上のカメラが見つかったということです。相次ぐ盗撮事件は後を絶ちません。ことさら教職員の不祥事が一般の犯罪率に比べて相対的に増えているということではありませんが、教師は他の公務員と較べて、子どもと毎日接する故に理性のコントロールと危機管理力が要求されています。にも関わらずどうしてこのような事件が起きるのかを考えていきます。

 このような教師による不祥事が起きる背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられます。教師の情報管理の不備や盗撮には、個人の倫理や規律の問題があります。「倫理観が欠如していた」「規律を守れなかった」という側面が最も大きな要因です。一部の教師は、権力を持った立場で生徒に接することができるという環境を悪用します。長年同じ職場で「外部の目が届きにくい」「管理監督が甘い」などの環境下では、逸脱行為が静かに進むこともあります。令和2年8月に度重なる教職員による性暴力被害が深刻化していることを受け、文部科学省は新たな方針を打ち出しました。

mini camera

 2022年4月1日から施行された「教員による児童生徒性暴力防止法(通称:わいせつ教員対策新法)」により、再取得制度が大幅に改正されました。主なポイントは3年後の自動再取得は廃止され、都道府県教育委員会が設置する「免許状再授与審査会」の同意がなければ再取得できないようになりました。性暴力による「わいせつ事案」の加害者というのは、極めて「再犯性」が高いと言われています。

 近年は、デジタル機器の普及により監視の甘さが指摘されています。スマートフォンや小型カメラの普及により、「盗撮」などが技術的に容易になっています。また、それらを取り締まる校内の監視体制やデジタルリテラシー教育の不足も一因です。一部の加害者は明確に「性犯罪者」であり、児童や生徒を対象にした性的嗜好を持っていることもあります。これは医療的・心理的な治療や介入が必要なケースもあり、個人の問題にとどまらないということです。

 次に学校組織の管理体制・風土の問題です。学校という組織自体はもとより「閉鎖的」であり、「教師は聖職者」という世間の過度な信頼や内部でのチェック体制が甘いことが問題になる場合もあります。管理職が問題行動の兆候を見逃し、内部告発がしにくい風土や人事異動で問題を「もみ消す」傾向もあります。超過勤務が多い過重労働は教師の多くが抱える深刻な問題です。文部科学省の調査でも、長時間労働(週60時間超)をしている教師が多数いることがわかっています。精神的・肉体的疲労が蓄積すると、正常な判断力が鈍ることもあります。ただし、こうした状況は不祥事を正当化することにはなりません。過労が犯罪行為の原因になりえますが、あくまで不祥事の「間接的な要因」に過ぎないといえます。

 学校においては、他の組織と同じく、クラスや担当部署で取り扱っている個人情報は「私物ではない」という考え方を教職員全体で共有するということです。教職員は時に、担当するクラスや部活動に対して責任を1人で抱え、管理しなければならない立場にあります。これが、自分のクラスの情報=自分の物、といったような認識に陥りやすいことになる理由です。教職員による不祥事は、個人の処分で済むという問題ではありません。1人の教職員の愚かな行動によって、他の教職員の尊厳や誇り、学校全体の評判や価値、教職員と児童生徒や保護者との信頼関係をも失墜させてしまう恐れがあることを忘れてはなりません。

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