Last Updated on 2025年6月7日 by 成田滋
ポリティカル・コレクトネス(PC) の2回目の話題です。PCの考え方により、用語が言い換えられる例はいろいろあります。放送用語や差別用語などで見られます。以下は、従来の用語と中立の用語のいくつかの例です。
- 看護婦・看護士 → 看護師 2002年に保健師助産師看護師法改正で使われ、男性も職業に就いているためです。
- 障害者 → 障がい者 「害」の字が使われていることに不満がある人の感じる悪い印象を回避するため、2001年に東京都多摩市が最初に採用しました。
- 助産婦 → 助産師 2002年、保健師助産師看護師法改正されました。ただし現行では資格付与対象は女性に限定されています。
- スチュワーデス → キャビンアテンダント (CA) 1996年に日本航空が従来の呼称を廃止し、他社も追随しました。世界の航空会社では男性も従事しています。
- 土人 → 先住民 1997年に北海道旧土人保護法が廃止されました。
- トルコ風呂 → ソープランド トルコ人留学生の抗議により1984年に改称されました。しかし実態は?
- 保健婦 → 保健師 2002年に保健師助産師看護師法が改正され名称が変更されました。
- 母子健康手帳 → 親子手帳 いまも母子健康手帳という名称は使われています。
- 保父、保母 → 保育士 1999年に児童福祉法改正されました。男性も職業に就いているためです。
- 父兄参観 → 保護者参観 「父兄」は放送禁止用語です。
- 肌色 → うすだいだい、ペールオレンジ 特定の色を「肌色」と呼ぶことは差別的な意識を助長したりする可能性があると指摘されています。
- 特殊教育 → 特別支援教育 学校教育法の一部改正により、2001年に知的な遅れのない発達障害も含めた対象の拡大します。
PCの考え方は、メディアにも影響を与えてきました。その一つが「放送禁止用語」とか「放送自粛用語」の誕生です。この現象は、法による明文化された放送禁止用語は存在せず、単なる放送事業者の表現の自主規制となっています。放送に用いない、あるいは放送に用いることに一定の制限を設ける判断と規制を行うことは、それぞれの国の歴史的経緯などが反映されています。国家として法令に「放送禁止用語」を定めている国もあれば、まったく自主的なものとしている国もあります。かつて太平洋戦争前・戦争中の日本では、国によって放送禁止用語が作られました。
メディアでは、差別の糾弾を回避する手段が常にとられています。その一つが差別用語の言い換えや差し替えです。「言語表現」というのは、単語を並べた文章によるものであり、差別的とされる単語のみを言い換え、差し替えたとしても、文章そのものが差別を目的とするものであれば意味がありません。これがいわゆる「言葉狩り」批判の根拠となっているのです。これが「ポリティカル・コレクトネス」にあたるのです。当然なことですが、差別的とされる単語に限らず、多くの人が不快感などを覚える単語の使用は好ましくはありません。
