各州におけるホームスクールの位置づけ

Last Updated on 2025年3月12日 by 成田滋

 ここでは、合衆国のいくつかの州においてホームスクール(HS)が、どのように位置づけられているかを考察することとします。

アラバマ州

 アラバマ州法では、「アラバマ州は、私立学校、教会学校、教区学校、宗教学校など、幼稚園から高校までの教育指導を提供する非公立学校、およびHSに許認可や規制を課す厳しい義務はない」と規定されています。

 アラバマ州のHS生は、私立学校または教会学校を利用するか、家庭教師を利用するかを選択できます。ただし、2014年以降、親は教会または私立学校から独立して、家庭教師オプションに記載されている指導資格を満たす必要もなく、自分でHSを行うことができると認められています。

 アラバマ州では一般的にHSを規制していないため、要件は少ないのが現状です。アラバマ州の公立学校に在籍している児童は、事案によっては正式に退学させる必要がある場合は、いつでも履行することができます。保護者は、生徒が在籍していることや保護者がアラバマ州法を遵守していることを確認するために、HSの意向を地元の学校区に通知する必要があります。保護者は出席簿を保持することも求められていますが、出席簿をアラバマ州教育委員会(ALSDE)または他の機関にこれを報告する必要はありません。教会や私立学校を使用する場合、保護者はその学校が定めた方針に従う必要があり、家庭教師は州法とALSDEが定めた要件に従う必要はあります。

カリフォルニア州

 カリフォルニアでは、HSの生徒は、(a) 自習またはチャータースクール(charter school)を通じて公立HSプログラムに参加する、(b) 資格のある家庭教師を利用する、(c) 認定された私立学校に子どもを入学させる、のいずれかを満たす必要があります。このような私立学校は、親が自宅で設立することも、親が自習または遠隔学習のオプションを提供する複数の私立学校を利用することもできます。

 カリフォルニアで私立学校を運営するすべての人は、教育委員会に毎年宣誓供述書を提出する必要があります。私立学校は、一般に公立学校で求められる教育内容に似ていますが、公立学校が作るカリキュラムよりも詳細な教育内容とすることは求められません。特定の学習コースを提供し、出席記録を保持する必要がありますが、それ以外は州の監督の対象にはなりません。

 カリフォルニアでは、学校の規模に関係なく、私立学校の教師は州の教員資格を持つ必要はありませんが、すべての教師は教える能力があればよいのです。この原則は最近異議を唱えられました。南カリフォルニアで、裁判所が任命した弁護士は、HSに関する判決を控訴裁判所に求めました。2008年2月28日、カリフォルニア州控訴裁判所(California Court of Appeals)は、カリフォルニア州で資格のない教師による個人指導を事実上違法とする判決を下しました。

 しかし、家族と学校であるサンランド・クリスチャン・スクール(Sunland Christian School)の法的代理人は再審を要求します。裁判所は再審の申し立てを認め、全員一致で控訴裁判所の判決を覆し、カリフォルニア州法の下では教員資格のない親でも子どもをHSに通わせることができると裁定しました。

オハイオ州

 オハイオ州で学生の義務的出席を免除する法律は、オハイオ州行政法典(Ohio Administrative Code)です。この法律では、「家庭教育は子どもの親や保護者が指導する教育」と定義されています。この法律の目的は、親が子どもをHSする権利が侵害されないようにすることです。HSを開始する前に、親や保護者は子どもの学区の教育長に通知する必要があります。一部の学校区では、独自の様式を使用しています。

 次のような情報が手紙またはその他の通知形式で提供される場合は、親は学校区の様式を使用する必要はないとされます。すなわち、HSを始める前に学校区の教育長に提供しなければならない情報には、学年、保護者の名前、住所 (電話は任意)、子どもの生年月日、オハイオ州行政法典に記載されている科目がホームスクールの一部であることを保証する保護者の署名、保護者が次の学年でカバーする予定のカリキュラムの概要、保護者が使用予定の教材のリスト、子どもが次の学年中に 900時間ホーム教育を受けることを保証する保護者の署名、そして最後に、ホームインストラクターが高校の卒業証書または高校の卒業と同等の資格を持っていることを保証することです。

 保護者はまた、前学年の学業評価レポートを教育長に送る必要があります。学業評価レポートは、全国的に標準化された標準テストの結果、または筆記によるポートフォリオのいずれかである必要があります。ポートフォリオには、生徒の作品のサンプルを含める必要があります。教育長は、14日以内に保護者に提出された学業評価が適正であるかを通知しなければなりません。

ヴァジニア州

 自宅で子どもを教えるには、教える側の親が以下の要件の少なくとも 1 つを満たしている必要があります。第1は有効な高校卒業証書 (または大学で取得できるような高等学位) を所持しており、学区の教育長に提出する必要があります。高校卒業と同等の学力を証明(General Educational Development: GED ではこの要件を満たしません。第2は州が承認した有効な教員免許を所持しているとです。第3は学校区の教育長が承認した遠隔教育または通信教育のカリキュラムを使うことです。第4は教える側の親が、ヴァジニア州の学習基準の目標を満たすことができるという証拠を提供することです。

 教える親は、自宅で子どもを教える意思を毎年学校区に通知する必要があります。子どもは、公立教育を受ける生徒に求められる州が義務付けているすべての予防接種を受けている必要があります。ただし、宗教上の理由で予防接種に反対し、公に認められた宗教免除証明書フォーム(Certificate of Religious Exemption Form) に記入している子どもは除きます。

 公立学校へのパートタイムの入学はまれですが、自宅学習の生徒が一部の授業、例えば親が教えることに自信がないような高度な数学や科学、または外国語などの選択科目を受講することは許可されています。自宅学習の生徒は、学校によってはその地域の学校でスポーツをする資格がある場合とない場合があります。

 上記に該当しないその他のオプションとしては、ヴァジニア州教育委員会の有効な教員免許を持つ認定家庭教師による自宅学習や宗教的免除があります。後者はヴァジニア州に特有のもので、公立教育と家族の宗教的相違が相容れないことが原因なのです。これは多くの場合、特定の家族の信念に反する情報を教える可能性がある科学や社会科に関連しているからです。子どもの家族が宗教的な養育を受けており、学校に通うことが信仰上忌まわしいという十分な証拠を提示し適切に書類を提出すれば、自宅で子どもを指導する際の前述の4つの要件を満たす必要ありません。

 年度末に、親は学校区には生徒が学業で習得したことを示す文書が提供しなければなりません。これは、ポートフォリオの提出、または認定プログラムである主要カリキュラムとして採用されているコミュニティカレッジ(community college)または通信教育プログラムからの成績表または成績証明書です。これらは教育学修士号以上の学位を持つ教育者から生徒の成績を評価してもらわなければなりません。

 こうした対応が困難な場合は、全米で標準化された達成度テストを使用する必要があります テストのスコアは、23パーセンタイル以上である必要があります。使用されるテストには、「スタンフォード達成度テスト、包括的基礎スキルテスト (CTBS)、カリフォルニア達成度テスト (CAT)、アイオワ基礎スキルテスト (ITBS-TAP)、科学研究協会 (SRA)、またはウッドコック・ジョンソン教育バッテリー」などがあります。これらのどれを選んでもかまいません。

 HSの生徒はヴァジニア州からの卒業証書を受け取れないため、コミュニティカレッジや高等教育機関への入学が大きな課題の一つです。通信教育を受ける生徒はプログラムから卒業証書を受け取りますが、その他の生徒は高校卒業と同等の学力を証明(General Educational Development: GED を取得することになります。家庭教育を受ける子どもはヴァジニア標準テスト(Virginia’s Standards of Learning: SOL) を受ける必要がありませんが、州内のHS生徒の多くが大学に進学しています。これは、HS生徒の大学適性試験(Scholastic Aptitude Test: SAT)やアドバンストプレースメント試験(Advanced Placement exams)などのスコアが高いことを示しています。

ワシントン州

 ワシントン州法では、8歳以上の子ども、または公立学校に正式に入学した子どもには教育が義務付けられています。ワシントン州では、ホームスクール(HS)で読み書き、綴り、言語、数学、科学、社会科、歴史、健康、職業教育、美術、音楽鑑賞を教えることを義務付けています。ただし、これらの科目は別々に教える必要はなく、州は年次評価の要件を満たすこと以外に、学習のタイムラインやスケジュールの提出を遵守することを義務付けていません。

 毎年、HSの生徒は州教育委員会によって承認された標準達成度テストまたは、現在ワシントン州認定の教師が実施する非テスト評価(non-test assessment)を受けなければなりません。テスト結果は非公開であり、コピーは保護者のみが受け取ります。ワシントン ホームスクール組織(Washington Homeschooling Organization: WHO) は、テストまたは非テスト評価を実施できる教師のリストを保有しています。

 テストとその結果は両方とも保管する必要がありますが、保管形式は指定されていません。ただし、保護者が後で子どもを正式な学校に入学させることに決めた場合、学校管理者から記録の提出を求められる可能性があます。州は法律に従って予防接種記録を義務付けており、指導および教育活動に関する記録の保管を保護者に要求しています。HSを開始するには、保護者は毎年HSという家庭教育を提供する旨の表明書を提出し、HSについて州の認定を受けることになっています。

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