懐かしのキネマ その97 【チャイナ・シンドローム】

Last Updated on 2021年8月14日 by 成田滋

原題は「The China Syndrome」といって、原子力発電所の取材中に事故に遭遇し真実を伝えようとする女性リポーターの活躍サスペンス映画です。1973年7月に公開されますが、たったの12日後にスリーマイル島(Three Mile Island)原子力発電所事故が発生します。ずさんな発電所管理の実態に気づき、事故を防ぐために命を懸ける原発管理者や不祥事を揉み消そうとする利益優先の経営者との対立を描いた問題作でもあります。「チャイナ・シンドローム」とは、 冷却装置の事故で、核燃料が高熱によってメルトダウンして放射能などが原子炉の外に漏れ出すことを意味する用語です。

アメリカの地方テレビ局の女性リポーター、キンバリー・ウェルズ(Kimberly Wells)は、原子力発電所のドキュメンタリー特番の担当となり、カメラマンのリチャード・アダムス(Richard Adams)とともにベンタナ(Ventana)原子力発電所の取材に赴きます。中央制御室を二人が見学中、原子力発電所は何らかのトラブルを起こしたような振動を発します。そこは撮影禁止の場所だったのですが、アダムスは密かにそのときのコントロールルームの様子を撮影していました。

Kimberly Wells

後日、そのフィルムを原子力の専門家に見せると、専門家からはこれは重大な事故が起きる寸前であったと伝えられます。技師で制御室の責任者のジャック・ゴデル(Jack Godell )が計器の表示間違いに気づき、危ういところで大惨事を免れていました。ゴデルは過去の安全審査資料を調べ直し、トラブルに繋がる重大な証拠を発見します。検査にかかる費用を削減するため、定期検査の結果に不正が施されていたのをゴデルは発見するのです。

危機感を訴えるゴデルですが、原発管理者側は原子力発電の安全性を信じて疑わず、多額のコストがかかる検査など不要であるとして、ゴデルの訴えをはねつけます。そこでゴデルはキンバリーを通じ、検査に不正が施されていることをマスコミを通じて世間に告発しようとします。しかし、会社側から自分がねらわれていることをカーチェイス(car chase) で知ります。

Kimberly Wells & Jack Godell

ゴデルは追手を振り切って原子力発電所に駆け込みますが、原子炉が一刻の猶予もない状態まで進行しているのを知ります。そして制御室からテレビ中継を通じて原発事故に繋がるトラブルを世間に告発するか、制御室からの操作で汚染物質をばら撒き発電所を使用不能にすると叫びます。原発管理者側は警察の突入部隊を呼び出し、またいつでもテレビ中継を中断できるよう、電力供給を断つための工作活動を開始します。キンバリーによるテレビ中継が始まった直後、原発管理者側によって電力供給が絶たれ、原発事故が発生します。警報の作動により深刻な事態を悟ったゴデルは死に物狂いで原子炉の停止を試みますが、彼は警察の突入部隊によって射殺されます。しかし、ゴデルの努力で原子炉は停止します。

原発管理者側は駆けつけたテレビ中継の取材に対し、一連の騒動はゴデルが酒に酔って錯乱して起こしたものであると主張し、原発が安全であることを強調して事故の隠蔽を図ります。しかしゴデルの同僚のテッド・スピンドラー(Ted Spindler)はテレビ中継の前でゴデルを擁護する発言を行い、キンバリーも視聴者に対してゴデルの正当性を訴えるのです。