Last Updated on 2025年3月1日 by 成田滋
私たちが自分の認知とは別の異なる認知を抱えた状態になると、不快感を覚えるものです。例えば、愛煙家が「喫煙はガンになる」という警告に接するとしますと、「タバコを吸い続けたい、だがガンになる恐れもある」という不安感を抱きます。その心理的な葛藤を言い表すのが「認知的不協和」(cognitive dissonance)という社会心理学用語です。
1954年にアメリカの心理学者レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)によって提唱されます。心理学辞典によると認知的不協和は次のように定義されています。「認知を構成する要素相互の間に不協和が起きることを認知的不協和とよぶ。そして不協和を低減する行動がおきる。」 以下ではWikipediaの例題を解説することとします。
不協和の状態が生まれると、その不協和を低減させるか除去するために、なんらかの努力をします。つまり、通常は二つの要素の間に不協和が存在するとき、一方の要素を変化させることによって不協和な状態を軽減または除去することができます。不協和を軽減させる努力の強弱は、不協和の大きさの関数となります。認知的不協和の度合いが大きければ、不協和状態を軽減させる努力はその度合いに応じて大きくなるものです。
例として、私という喫煙者が喫煙の肺ガンの危険性を知ったとしましょう。ここに二つの認知状態が生まれます。
認知1 私は煙草を吸う
認知2 煙草を吸うと肺ガンになりやすい
このとき、認知1と認知2は矛盾します。「肺ガンになりやすい」ことを知りながら、「煙草を吸う」という行為のため、私は自分自身に矛盾を感じるのです。そのため私は、認知1と認知2の矛盾を解消しようとします。
自分の行動(認知1)の変更
認知3(認知1の変更) 私は禁煙する
一番論理的なのは認知1を変更することです。「喫煙」(認知1)を「禁煙」(認知3)に変更すれば、「煙草を吸うと肺ガンになりやすい」となります。しかし、喫煙の多くはニコチンに依存する傾向が強いため、禁煙行為は苦痛を伴うものです。したがって、「喫煙」(認知1)から「禁煙」(認知3)へ行動を修正することは大変な苦痛を伴います。それが故に「禁煙」できない人も多いのです。その場合は、認知2に修正を加える必要が生じてきます。
新たな(認知4)または(認知5)の追加
認知1 私は煙草を吸う
認知2 煙草を吸うと肺ガンになりやすい
認知4 喫煙者で長寿の人もいる
認知5 交通事故で死亡する確率の方が高い
「喫煙者でも長寿の人もいる」という(認知4)を加えれば、「煙草を吸う」(認知1)と「肺ガンになりやすい」(認知2)との間の矛盾を弱めることができます。さらに「交通事故で死亡する確率の方が高い」(認知5)をつけ加えれば、肺ガンで死亡することへの恐怖をさらに低減することができます。 このようにして認知的不協和という心の葛藤を軽減するために、別の意見とか事例を引用してなんとかして喫煙の害から逃避し、喫煙を合理化しようとするのです。
