キリスト教音楽の旅 その30 日本のキリスト教と音楽  讃美歌の変遷

Last Updated on 2019年5月29日 by 成田滋

教会や礼拝で歌われる讃美歌の傾向を取り上げます。「主よ 御許に近づかん(Nearer, My God, to Thee)」は、クラッシック讃美歌320番です。歌詞を紹介しましょう。

 主よ御許に近づかん
  登る道は十字架に
   ありともなど悲しむべき
    主よ御許に近づかん
  Nearer, my God, to Thee, Nearer to Thee!
   Even though it be a cross That raiseth me;
  Still all my song shall be,

この讃美歌の歌詞は大分意訳されています。死の絶望に直面した人に力を与える讃美歌として歌われるものです。日常会話では使われない古い言葉や造語があります。「御許」、「ありとも」、「悲しむべき」といった表記です。讃美歌271番では、「勲なき我を 血をもて贖い」という歌詞となっています。キリスト教の専門用語も含まれています。意味が分からないで歌う人々もいます。

そこで歌いやすく理解しやすい讃美歌をという声が生まれます。それがポップス讃美歌を使い青少年や家族向けで人気を集める礼拝が行われるきっかけとなります。その一つの例が映画「天使にラブ・ソングを」(Sister Act)で歌われる聖歌隊の曲です。主演はメアリーを演じたウーピー・ゴールドバーグ(Whoopi Goldberg)。指揮をしていたメアリーは、退屈な聖歌をモータウン(Motown)の楽曲の替え歌にアレンジして派手なパフォーマンスを繰り広げ、厳格な修道院長と対立します。ですがモータウン風の歌は、一躍町中の人気者になります。初めは疎んじていた院長やシスターらも、若い者が教会にやってくると音楽の意義を認めポップス讃美歌に賛同していくのです。実に楽しい映画でした。

今、多くのルーテル教会はポップ讃美歌をどんどん取り上げて礼拝で歌っています。時代の変化が教会にも大きな影響を与えているのです。教会は音楽の流行を生み出すところともいえます。