Last Updated on 2025年3月19日 by 成田滋
私は、1986年8月に九州大学おいて開かれた日本教育心理学会で一研究を発表しました。発表題名は「特殊教育における単一事例実験法と統計的ー臨床的有意に関する問題」という少々長いものでした。この論文を、今盛んに注目されているChat GPTで抄録を作らせてみようと考えました。
Chat GPT(Generative Pre-trained Transformer)とは、大規模言語モデル(Large language Models : LLM)を用いて、人間が使う自然言語に近い応答を生み出す生成AI技術を使ったチャットシステムのことです。LLMとは、「大量のデータとディープラーニング(深層学習)の技術によって構築された言語モデル」と呼ばれています。今回使ったのはOpenAI社によって開発された「Chat GPT-3」というモデルです。
今回Chat GPTで要約させようとした論文はA4で二枚の短い論文です。Chat GPTは次のような抄録を提示してきました。文章は全く校正せず、原文のままです。
この文書は、特殊教育における単一事例実験法と統計的および臨床的有意性に関する問題について論じています。 単一事例実験法(N=1)は行動科学や応用行動療法で広く使用されているが、教育学や心理学では一般的ではないと指摘されています。 これは、単一事例実験が法則性や普遍性の究明に難しいことや、推測統計学の対象になりにくいことが原因です。
文書では、単一事例実験法の外的妥当性や臨床的有意性についても議論されています。 外的妥当性は、実験結果が一般化できるかどうかに関わり、臨床的有意性は行動の変化が被験者の日常生活において意味があるかどうかを評価します。 実験的基準と臨床的基準の違いも説明されており、統計的有意性が必ずしも臨床的有意性を保証するわけではないことが示されています。 具体的な実験例として、職業訓練センターでの軟水器の組立作業における強化方法の効果や性差の影響についての研究が紹介されています。 これらの研究では、統計的有意性が確認されたが、臨床的有意性については慎重な解釈が必要であるとされています。
文書は、統計的有意性と臨床的有意性のバランスを取ることの重要性を強調し、特殊教育における単一事例実験法の適用可能性とその限界について考察しています。
Chat GPTが生成したこの抄録は、全体的に極めて正確なものです。構文にも誤りはありません。それでも、いくつか課題を指摘するとすれば、被験者の記述がないこと、口語体と文語体が末尾にいくつか混在しているこ、論文を文書と呼んでいることなどです。私の長男も勤務する大学の助教授らの終身在職権であるテニュア(tenure)の審査にあたって推薦文を作り、その後Chat GPTを使い構文や文法などの間違いを直しているとのことです。
今やAI技術は進化してあらゆる分野に活用されつつあります。中国も人工知能(AI)のディープシーク(DeepSeek)が金融取引の分析から求人候補者の選定まで、人々のライフスタイルを変えていると報じられています。文学の世界も、AI技術によって作品を生成する時代がすぐそこにきています。