大学改革とマイクロ・クレデンシャル

大学独自の改革として、オンラインと対面のハイブリッド教育の本格化という要請があるといえそうです。コロナ後オンライン化が進んだものの、教育の質の保証はまだ課題となっています。大学はオンライン講義の標準化や大規模公開オンライン講座 ( Massive Open Online Course:MOOC ) の活用などです。MOOCとは、オンラインで誰でも無償で利用できるコースを提供するサービスのことです。

 大学は、社会や国内外企業との連携強化を一層図るべきです。大学と企業の共同研究や人材育成の拡大です。企業が大学に期待するのは「研究力」だけでなく「自立した人材育成」です。産学共同プロジェクト、長期インターン、研究成果の社会実装をセットで進める必要があります。大学は、若い人々のライフコースに合わせた柔軟な大学制度も必要でしょう。例えば、転部・副専攻・複数大学の履修など、柔軟な学修履歴を認める仕組みです。大学は、財政基盤を強化するために、同窓会組織や企業からの寄付行為に力を注ぐべきです。

 アメリカの大学は州立、私立を問わず寄付行為などを盛んにやり、多額の金を集めて奨学金や研究費に充てています。その基金額ーエンドウメント(endowment)は日本の大学の比ではありません。例えば、ハーバード大学は532 億ドル(8兆3,340億円)、イェール大学は441 億ドル(6兆9,084円)、スタンフォード大学は406億ドル(6兆3595億円)、プリンストン大学はは364 億ドル(5兆7,017億円)、マサチューセッツ工科大学は274 億ドル(4兆2,854円)と発表されています。他方、慶應義塾大学は 約870 億円、早稲田大学は約300億円、東京大学は440億円程度、京都大学は760億円を保有しているとのことです。このようにアメリカの一流大学は、大きなエンドウメントを持っており、研究費・奨学金・運営費などへの長期支援の重要な財源となっています。なお、エンドウメントは「寄付元本+投資による運用資産+不動産」の合算で評価されています。

 ヨーロッパの国々、特にEU内で実施されている。「マイクロ・クレデンシャル(micro credential)(短期資格)」のようなものも取り入れることが考えられます。マイクロク・レデンシャルとは、「学習内容をより細分化し、細分化された単位ごとに個別に認証する」ことをいいます。従来の大学の学士号や修士号などの学位プログラムは、まとまった大きな単位での認証(マクロ・クレデンシャル)ですが、これからの高度なIT人材育成には、学士という証明だけでなく、分野横断的な知識やスキルの習得も重要となってきます。

 最近、文部科学省は、2040年までに博士取得者を3倍に増やす目標を掲げています。博士人材はイノベーションや知の創造の担い手として、科学技術・研究力を底上げし、総合的な国力強化につながると考えられています。博士号取得者を育成して国内に留め、さらには海外から優秀な博士を呼び込むことで、日本の研究基盤を強化し、知の流出を防ぎたいという思いもあります。文部科学省のタスクフォースでも「博士取得者を適切に評価・活用する社会をつくり、キャリア満足度を高める」議論がなされています。欧米のように学位を有する者は社会的地位が高く、待遇を良くするという仕組みを日本は取り入れるべきです。博士号取得者を学士や修士取得者と同じように待遇するような企業や大学の人事管理はどうしても改善すべきです。

 まとめとして、大学振興と競争力強化の鍵は、「数の維持」ではなく「価値の再定義」です。人口減少社会では、大学が単に「高校の延長」では生き残れません。教育・研究では、地域貢献や社会人学習の多機能拠点としての大学の姿が問われています。基盤経費・社会人教育支援という国の支援が不可欠です。大学学部の中身改革などの自助努力はもちろん欠かせません。

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