2025年5月19日の参議院予算委員会でで、石破首相が答弁した内容が物議を醸しています。国民民主党議員が「財政的な制約があるから減税を躊躇しているのか。減税して消費を増やすべきだ」と迫ったのに対し、石破氏は次のように答弁しました。「金利がある世界の恐ろしさをよく認識をする必要がある」と指摘した上で、日本の財政状況は「間違いなく極めてよろしくない。ギリシャよりもよろしくない状況だ。税収は増えているが、社会保障費も増えている。減税して財源は国債で賄うとの考えには賛同できない。」という答弁です。
消費税率引き下げの是非を巡る議論の中で、減税に反対する文脈で出た発言のようです。しかし、この答弁の内容のタイミングが問題です。日銀が長年の金融緩和を巻き戻そうと国債買い入れを段階的に縮小しようとしています。市場参加者がすでに金利上昇に神経質になっています。という理由で、日本の財政問題を再び論点にする結果となっています。「金利がある世界の恐ろしさ」というのは、国債の利回り(金利)懸念しているようです。日本国債の大半は国内で保有され、日銀、銀行、保険会社、年金基金などが購入しています。外国勢は6.4%でしかありません。ユーロ建て国債の大半を外国人投資家が保有していたギリシャとは事情が違います。
石破首相は減税を求める世論を翻意させるつもりだったようです。つまり消費税の減税による福祉など公共サービスなどをどのような財源で補うのかという問いに関連しています。しかし、公共サービスの削減には耐えられない国民に向けて語るには、あまりに無責任な発言だったのです。こうした風説のような流布で国際問題にも発展しかけないのです。海外メディアも少々騒ぎ出したようで金融市場が不安化しかねません。金融商品取引法第158条でうたう偽計または風説を流布にあたるのではないかと歌わがれるほどです。
日本とギリシャの財政事情の共通点は、経済協力開発機構(OECD)によれば、日本の債務は国内総生産(GDP)の240%相当といわれます。このように日本は世界最大の債権国ですが、政府と家計の純資産は潤沢なのです。日本国債が抱える問題は、需要と供給の不均衡にあります。日銀が再び市場に介入せざるを得なくなる可能性が高まっているかもしれません。
石破首相の不用意な発言は国債利回りへの圧力を強め、介入を現実味あるものにするかもしれません。アメリカの信用格付けがムーディーズ (Moody’s Corporation) によってまたも格下げされかもしれないのです。ムーディーズとは2大格付け会社の一つで、企業や債券などの信用力を調査し、信用格付けを行っています。石破首相の日本国債に新たに圧力をかけかねないような軽々しい発言は危険極まりないことです。ムーディーズによる日本国債の格下げは2011年8月、2014年12月に行われています。
日本に起こり得る唯一の財政危機とは、緊縮財政による経済の悪化や所得の低下、失業、需要と供給のアンバランス、通貨の下落といった自ら招く危機だけと言い換えてもいいのです。首相という立場にある者は、それを理解していなければならないのです。
