Last Updated on 2017年9月19日 by 成田滋
本題からは少しはずれますが、 マッカーシズムの影響がアメリカの苦悩を物語る話題です。ソ連が1949年に原爆実験に成功します。翌年、アメリカで第二次大戦中に原爆開発であるマンハッタン計画(Manhattan Project)に関係していたドイツ出身でイギリス人の核物理学者、クラウス・ヒュークス(Klaus Fuchs)がソ連のスパイとして逮捕されます。同年、電気技術者であったジュリアス・ローゼンバーグ(Julius Rosenberg)とその妻エセル・ローゼンバーグ(Ethel Rosenberg)も原子力機密をソ連への漏洩に協力したかどで逮捕されます。これがローゼンバーグ事件(Rosenberg Case)です。
夫妻は戦時中はニューメキシコ(New Mexico)のロスアラモス(Los Alamos)の研究所で勤務していました。エセルの弟、グリーングラス(David Greenglass)や化学者であったゴールド(Harry Gold)を通じて、夫妻は機密を入手したといわれます。グリーングラスとゴールドは裁判中にローゼンバーグ夫妻に機密を渡したと証言するのです。
しかし、ローゼンバーグ夫妻は一貫して犯行を否認するも1951年4月に死刑判決を受けます。その間、この事件は政治的なでっち上げとする助命運動が国際的に広がります。夫妻が獄中から幼い2人の息子に送った書簡集は大きな反響を巻き起こします。このニュースは連日新聞で報道されますが、1954年6月に処刑されます。裁判から処刑にいたる過程にマッカーシズムという共産主義者摘発運動が深く影響していた事件です。