2002年7月に、現在の上皇上皇后両陛下がポーランドを訪問したとき、ポーランド大統領夫妻主催の晩餐会でなされた挨拶は、ポーランドと日本の関係を示す貴重なものです。その中で、ワルシャワ大学東洋学部日本語学科の教授をしていたコタンスキ(Wieslaw Kotanski)教授のことに触れています。コタンスキ教授は日本語や日本文化研究者で「古事記」の研究を始め,雨月物語、雪国、日本文学集などをポーランド語で紹介しています。1957年以来何度も来日し、日本における宗教発展の概要についての著作もあります。
上皇上皇后両陛下は、同じく挨拶の中でアンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)を中心として両国の多くの人々の協力によって,古都クラクフ(Krakow)に設立された「日本美術技術センター」のことにも触れています。1987年にワイダは稲盛財団による京都賞の思想・芸術部門で受賞します。「人間の尊厳と自由精神の高揚を力強く訴えてきた」というのが受賞の理由です。ワイダは賞金を全額寄附し「京都クラクフ財団」をつくります。そしてクラクフで日本美術技術センター設立のために動きます。日本ではそれに呼応して、放送作家であり映画プロデューサで岩波ホール総支配人の高野悦子が5億円の寄付活動を始めます。日本政府もその企画を支援し、1994年に日本美術技術センターが完成します。
センターにはヤシェンスキ(Felix Yaschenski )というポーランドの美術品コレクターが集めた15,000点に及ぶ日本美術のコレクション(Felix Yaschenski Collection)が展示されて、両国の文化交流の一つの中心としてその役割を果たしているといわれます。ポーランドを訪ねたときは、是非立ち寄ってみたいところです。