私はキリスト教と音楽について専門家ではありませんが、少しはかじっているので、個人的な経験や知識をもとに筆を進めることにします。できるだけ時代考証をしながら正確を期してまいります。
キリスト教音楽は大きく二つに分類することができそうです。一つは典礼とか礼拝のための音楽、もう一つは大衆的宗教音楽、たとえばラフダ(lauda)と呼ばれる神をたたえる歌やオラトリオ(oratorio)などの大規模な楽曲です。大衆的宗教音楽というのは、筆者の造語です。
典礼は礼拝とか祭礼とも呼ばれ、体系化されたものです。キリスト教会においては、教派や教団によって制定されています。典礼の形式はそれぞれに異なり、奏でられる音楽もさまざまです。こうした典礼音楽は公の礼拝や祈祷でのみ用いられる狭義の音楽です。他方、大衆的宗教音楽というのは、一般に演奏会向けのキリスト教音楽というか、芸術音楽のことです。大衆的宗教音楽の主題は、聖書の記述を拠りどころにしているのが普通です。クリスマス・オラトリオ(Chrismas Oratorio)とかレクイエム(Requiem)などが有名です。