心に残る名曲  その百四十八 モンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

中世期、北イタリアのクレモナ(Cremona)に生まれたクラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi)の作品について触れます。幼少期はクレモナ大聖堂(Cremona Cathedral)の楽長であったマルカントニオ・インジェネリ(Marcantonio Ingegneri)の元で学びます。

インジェネリという音楽家は、世俗的な精神を込めた教会音楽を作るとともにマドリガル(madrigals)作品で知られています。モンテヴェルディはその薫陶を受け、1582年と1583年に最初の出版譜としてモテット(Motet)と宗教マドリガルを何曲か出しています。1587年には世俗マドリガルの最初の曲集を出版します。

1590年に、マントヴァ(Mantua)のヴィンチェンツォ1世 (Vincenzo I )のゴンザーガ宮廷(Gonzaga Court)にて歌手およびヴィオラ・ダ・ガンバ奏者(Viola da gamba)として仕えはじめ、1602年には宮廷楽長となります。その後40歳まで主にマドリガルの作曲に従事し9巻の曲集を出版します。

モンテヴェルディの作品はルネサンス音楽からバロック音楽への過渡期にあると位置づけられています。その作品はルネサンスとバロックのいずれかあるいは両方に分類されるくらいです。後世からは音楽の様式に変革をもたらした改革者とみなされています。オペラの最初期の作品の一つ「オルフェオ」(The Fable of Orpheus Mantuaz)は、20・21世紀にも頻繁に演奏される最初期のオペラ作品となります。

「オルフェオ」の画期的な点は、その劇的な力と管弦楽器を用いて演奏されたことです。当時ルネサンス音楽の対位法の伝統的なポリフォニーを使った優れた作曲家として出発しますが、やがてモノディ(monody)という新しい弾き語りのスタイルを音楽を取り入れていきます。モノディとは、16世紀終わりにフィレンツェやローマを中心に生まれた音楽様式です。

1632年、モンテヴェルディはカトリック教会の司祭に任命されます。詩篇121の「聖母マリアの夕べの祈り」(Vespro della Beata Vergine)は素晴らしい響きの曲です。