心に残る名曲  その百四十七 ルカ・マレンツィオと宗教マドリガル

イタリア後期ルネサンス音楽の作曲家、ルカ・マレンツィオ(Luca Marenzio)を取り上げます。マドリガルの後期の発展段階において、後日紹介するクラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi)による初期バロック音楽への過渡期に先駆けて、おそらく最もすぐれた実践例を残したといわれる作曲家です。甘美な抒情性を漂わせた作風から、アルカデルト(Jacques Arcadelt)のモテット、マドリガル(madrigal)、シャンソン(chanson)になぞらえて、「崇高で優美な白鳥」と評されるほどです。

マレンツィオの経歴に触れることにします。マレンツィオは生まれ故郷のブレシア(Brescia)で聖歌隊員として訓練を受けます。やがてローマにて、ルイギエステ枢機卿(Cardinal Luigi d’Este)に仕えます。1588年にフィレンツェ(Florence)に行き、そこでジョバンニ・バーディ(Giovanni de’ Bardi)という作曲家、作家と一緒に音楽家や詩人の集まりに参加します。

ところでマドリガルは、イタリア発祥の歌唱形式の名称です。マドリガルには、時代も形式も異なった 中世マドリガルとルネサンス・マドリガルがあります。私たちが通常呼んでいるのはルネサンス・マドリガルを指します。マレンツィオは、多くのマドリガルを作曲します。マレンツィオ16世紀を代表する最も著名なイタリアのマドリガル作曲家の一人です。ついでですが、シャンソンは中世からルネサンスにかけて作られたフランス語の歌曲のことです。宗教マドリガルの「Solo e pensoso」「Concerto Vocale」をお聴きください