留学の奨め その17 ThanksgivingとSarah Hale

筆者の長男の嫁ケイト(Kate)は小学校の教師をしながら童謡を書いている。まだ作品は出版されたことがないようだが、、。かつて彼女から米国の女性作家であるサラ・ヘイル(Sarah J. Hale)のことを聞いたことがある。ケイトはヘイルを私淑しているようである。ヘイルは米国のThanksgivingの歴史では忘れられない女性である。今回はThanksgivingのしめくくりとしてサラ・ヘイルに触れる。

ヘイルは、1800年代に沢山の作品を書いた作家である。その代表作は”Mary Had a Little Lamb”という童謡(nursery rhyme)である。童謡はマザー・グース(Mother Goose)とも呼ばれ、英米を中心に親しまれている童話の総称である。

ヘイルが最初に発表した童話は”A New England Tale”。この作品の主題は奴隷制度を扱ったもので、この作品により最初の女性作家の一人と呼ばれるようになった。”A New England Tale”はニューイングランド(New England)の美徳や伝統を信奉し、国の精神的な富として大事にすることを主張した。しかも、当時いた黒人奴隷をリベリア(Liberia)の地に戻すということも主張し、この作品を一躍有名にしたとされる。

この本の二版の序文の中でヘイルは、奴隷主というのは奴隷の兄弟であり、使える者でもあること、そして博愛の精神が正しいことを求め悪を憎むということ、それを忘れていると警告したのである。奴隷制度がいかに非人道的なものであるか、人の道徳的な成長を阻害していることも書いたのである。

1828年、ある聖職者からの招きでヘイルはボストンに移り、ある雑誌の編集長になる。編集長として、彼女は女性が高等教育の機会に浴する必要性を主張し、教育によって女性一人ひとりが知的で道徳的に成長することを説いた。

前置きが相当長くなったが、ヘイルがThanksgivingにいかに関わったかである。彼女は米国で最初にThanksgivingを国民的祝日として主張した女性である。もともとThanksgivingはニューイングランドでは祝われていた。各州でも10月とか1月に設定されてはいた。彼女は歴代の大統領にThanksgivingの祝日とするように要望する手紙を出していた。そしてようやく1863年にアブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)の支持により国の祝日とする法律が制定されたのである。

Thanksgivingは、南北戦争で疲弊し分断された国を統合する象徴と考えられた。それまでは、国民の祝日だったのはジョージ・ワシントン誕生日と独立記念日だけであった。ヘイルはワシントンD.C.の郊外にあるマウントバーノン(Mount Vernon)にあるワシントン邸と農場を記念館にすることやボストンにあるバンカーヒル記念塔(Bunker Hill Monument)の完成のために多額の寄付金集めに奔走した。作家として、また運動家としての彼女の活躍は米国の歴史に記されている。
HD_haleSJ4c  Sarah J. Hale
abraham_lincoln_seated_feb_9_1864  Abraham Lincoln

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