米国のシンクタンク(think tank)、国際教育研究所(Institute of International Education: IIE)が発表した2013〜14年度の米国の大学や大学院への留学生の統計は興味深い。国際教育研究所はフルブライト財団の支援によるFulbright Programを主宰したり、国内外の留学生を支援する、いわば米国における国際交流教育推進の旗艦組織である。
この統計によると前年度と比較して8.1%増の約88万6千人で、留学生の総数は1,107万5千人であるという。米国は留学生で支えられているといってよいほどの数字である。率直にいって米国の大学への留学はやはり高い人気があるという印象である。
国別の留学生の数だが、第1位は5年連続して中国人で、27万4千人とあり、これは前年の16.5%の伸びで留学生全体の31%を占めた。第二位はインドで10万3千人の6.1%の伸び、第三位は韓国となっている。日本からは1万9千人。前年度より6.2%減っている。この減少は9年連続して続いている。1990年後半の留学生のピークだった頃と較べで半減してしまったといわれる。
留学生の増加の伸びでいえば、最高はサウジアラビアからの留学生の伸びが21%で5万4千人となっている。ブラジル、クエートからの留学生も大幅に増えている。この理由は国費留学生の増加であるという。
米国の大学で留学生が増加する第一の理由は、優れた高等教育を受けられる環境があるからである。留学中に学位を取得すれば、自国に帰ったときその身分が優遇され、地位や高所得が約束されている場合が多い。今も留学は大きなステイタスとなっている。
第二は派遣先の国内で、高等教育機関を十分な早さで作れないなど、人材養成が追いつかず、そのために留学生が増えているという状況である。若者の向学心を満たす教育や研究環境が不十分ということだろう。
第三は米国は伝統的に留学生の出身国がどこであれ歓迎するという姿勢をとっていることである。中国やインドだけでなく、キューバやイラン、ベネズエラからもたくさんの留学生を迎え入れている。しかも留学生の授業料は高い。大学にとっては大事な収入源ともなっている。
米国との外交関係が緊迫した状態にある国からも米国には留学生が押し寄せている。国際間の緊張が続くとはいえ、留学生を受け入れる体制、例えば人権の尊重、政教の分離、安全が整っているからだと考えられる。
College of Holy Cross 小村寿太郎