心に残る名曲 その四十 「クラリネット協奏曲 イ長調」  K.622

モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)が協奏曲のジャンルで残した最後の作品であり、クラリネットのための唯一の協奏曲といわれています。復習ですが協奏曲とは別名コンチェルト(Concerto)、管弦楽団を従えて独奏するような形式です。管弦楽は黒子のような存在なのですが、この協奏曲を聴いているまるでクラリネットと競争するかのような、掛け合いのようなすばらしい協演を聴かせてくれます。

第一楽章はアレグロ(allegro)とあります。音楽用語ですが、イタリア語本来の意味は「陽気な、快活な」だそうですが、まさにそんな感じのする楽章です。歌劇「魔笛」の一部を編曲したような快活な楽章です。色彩豊かな旋律で満ちています。

第二楽章は、アダージョ(adagio)、つまり遅い速度で書かれた楽章です。なんともやるせないというか、切ないというか、なんともとろけるクリームが口のなかに広がるみたいな感じです。

第三楽章はロンド(rondo)とあります。踊り手がまるい輪をつくって踊るかのような雰囲気です。ロンドとは舞踏歌とか輪舞曲ともいわれています。同じ旋律を幾度も繰り返す形式の楽章です。なまめかしく色っぽいさま、男の気をそそるさまを「コケティッシュ(coquetry)」というのだそうですが、この楽章はそんな雰囲気が横溢しています。