バッハ (Johann Sebastian Bach) は音楽総監督(カントルーCantor)、教会音楽家、演奏者、聖歌隊指揮者など多彩な活動した作曲家です。特にライプツィヒ(Leipzig)の聖トーマス教会(St. Thomas Church)のカントルとしての活躍がめざましく、宗教曲、管弦楽器曲、協奏曲、室内楽曲、鍵盤楽器曲に膨大な作品を残しています。
バッハには自分の子供たちのために書いた曲も多いといわれます。たとえば、「アンア・マグダレーナのためのクラヴィア小曲集」「インヴェンション」「シンフォニア」「平均律」を含む「イギリス組曲」、「フランス組曲」、「イタリアン・コンチェルト」、「パルティータ」、「トッカータ」などで、それらの作品でバッハは対位法と云われる複数の旋律をそれぞれの独立性を保ちながら、互いに調和させて重ね合わせる技法を使っています。クラヴィア小曲集で知られる鍵盤楽器曲は今日のピアノの学習に欠かすことのできない重要な作品となっています。
「小フーガ」の愛称で親しまれているのが「フーガ ト短調 BWV 578」です。最初の4小節半のフーガ主題は、最も分かり易く親しみやすい旋律として名高いものです。各地の演奏会でしばしば演奏されています。この作品は4声フーガとして精密に構成されていて、伝統的な対位法を用いています。
対位法という技法は、イタリアの作曲家コレッリ(Arcangelo Corelli)の有名な作曲技法といわれ、模倣し合う2声のそれぞれに8つの音符が現れ、前半4音で一気に駆け上がったあと、後半4音で一息に駆け下りるという手法がみられます。「小フーガ」の愛称が付くのは、「トッカータとフーガニ短調」が余りにも壮麗で広く知られていること、四分弱の曲の長さから、この名が付いたようです。
この曲は、1965年に札幌ユースセンタールーテル教会に設置された北海道で最初のパイプオルガンの献納式のプログラムに入っていました。「トッカータとフーガニ短調」も演奏されました。東京芸術大学の教授であった秋元道雄というオルガニストを招きました。