今回は、バッハから少し時代を経てポーランド(Poland)の作曲家ショパン(Frederic Francois Chopin)の作品です。「Ballade NO. 1 in G Minor」という曲です。バラードとは譚詩曲とか 叙事歌といわれているようです。幻想曲とか即興曲ともいわれています。この作品では転調の妙技が活かされ、美しい序奏から激情的な盛り上がりをみせ、終曲へと向かいます。なにか劇的な余韻を持った曲です。
2002年に公開された映画「戦場のピアニスト(The Pianist)」にこの曲が登場して、観客を魅了します。実に見応えのある優れた映画です。戦争に翻弄されるポーランド国民やユダヤ人、そして音楽家が描かれます。監督はポランスキー(Roman Polanski)。彼もユダヤ系のポーランド人です。アウシュビッツ(Auschwitz)の生き残りで、「ユダヤ人狩り」から逃れるため転々と逃亡した体験がポランスキーの映画制作に深い影響を与えたようです。
「戦場のピアニスト」を簡単に紹介します。1939年9月1日にナチス、及びナチスと同盟を組むスロバキア(Slovakia)がポーランド領内に侵攻します。このときユダヤ系ポーランド人でピアニストで作曲家でもあったシュピルマン(Władysław Szpilman)は首都ワルシャワ(Wasaw)の放送局で演奏していました。ワルシャワが陥落すると、ユダヤ人はゲットーと呼ばれる居住区に移され、シュピルマン一家も飢えや無差別殺人に脅える日々をおくります。やがて何十万ものユダヤ人が収容所へ移されることになりますが、一人収容所行きを免れたシュピルマンは、決死の思いでゲットーを脱出します。砲弾が飛び交い、街が炎に包まれる中、必死に身を隠します。やがてワルシャワの蜂起も起こります。
ある家でシュピルマンはピアノを発見します。そこに坐り心の中で曲を弾くのです。ある晩、彼は発見した缶詰を開けようとしているところをドイツ人将校ヴィルム・ホーゼンフェルト(Wilm Hosenfeld)に見つかってしまいます。彼の質問に「ピアニストだった」と答えると、ピアノを弾くように命じられます。その時演奏したのがこのバラードです。ドイツの敗北を予想するホーゼンフェルトは、密かにシュピルマンに包みを差し入れます。その中にはライ麦パンと共に缶切りが添えられています。