外国を知るには、伝統や文化を形成した宗教の影響を考えるのが大事だとかねがね考えている。スコットランドも長い宗教の歴史がある。特に宗教改革(Reformation)が及ぼした運動がその後の国作りに反映していることが分かる。
宗教改革といっても一口で語るのは難しい。Encyclopædia Britannicaによれば、ローマカトリック教会の様々な縛りや制度に対する抵抗としてとらえるのが一般的である。抵抗の槍玉になったのが「免罪符」(indulgence)である。免罪符は、16世紀、カトリック教会が発行した罪の償いを軽減する証明書のことである。免罪符は罪の赦しを与えるとか、責めや罪を免れるものや行為そのものを指すこともある。
元来、キリスト教では洗礼を受けた後に犯した罪は、告解によって赦されるとされていた。一般に、課せられる「罪の償い」は重いものであった。ところが、中世以降、カトリック教会がその権威によって罪の償いを軽減できるという発想が生まれてくる。これが「贖罪」、いわば罪滅ぼしである。免罪符によって罪の償いが軽減されるというのは、「人間が善行や業によって義となる」という発想そのものであった。
前稿でも触れたことだが、教会の免罪符による赦免という世俗的な行為とその権威の失墜などに対して、改革の機運が生まれる。罪ある人間はいかに救われるのかという根源的な問いが広まる。それを世界に訴えたのが聖アウグスティン(St. Augustine)修道会の聖職者であり神学者であったマルチン・ルター(Martin Luther)である。
宗教改革という運動は、普遍的な教会とされたカトリック教会から訣別しプロテスタント教会(Protestant Church)という信徒の集まりをつくることになっていく。この改革運動から新しい教会が生まれただけでなく、既存のカトリック教会にも大きな影響を与え、その余波はヨーロッパ文化や思想にも及んでいく。