心に残る一冊 その59 「誰がために鐘は鳴る」

この作品は、アーネスト・ヘミングウエイ(Ernest M. Hemingway)の小説「老人と海 (The Old Man and the Sea)」、「武器よさらば (A Farewell to Arms)」と並ぶ名作といわれています。スペイン内戦 (Spanish Civil War)を主題としています。原題は「For Whom the Bell Tolls」。

スペイン内戦は、スペイン軍の将軍フランシスコ・フランコ(Francisco Franco)に率いられたグループがスペイン人民戦線政府といわれた共和国政府に対してクーデター(military coup)を起こすことにより始まります。この内戦は1936年から1939年まで続き、スペイン国土を荒廃させ、共和国政府を打倒した反乱軍側の勝利で終結します。それによってフランコ政権下というファシスト体制ができあがるのです。この政権はやがてイタリアのムッソリーニ(Benito Mussolini)やドイツのヒットラー(Adolf Hitler)からも支援を得て連合国と戦うことになります。

舞台は、スペイン、マドリッド(Madrid)の郊外の山中です。すでにファシスト軍の包囲にあり、共和国軍はその攻撃にさらされます。一アメリカ青年ロバート・ジョーダン(Robert Jordan)は、その激しい情熱によって、スペイン内戦に馳せ参じ共和国政府軍の義勇軍に加わり、ファシスト軍への救援を阻止するためにパルチザン(Partisan)であるゲリラ隊を指揮して山中の橋を爆破しようとします。彼の活動は4日3晩という期間なのですが、死の爆破を前に知り合ったスペイン人の娘マリア(Maria)と熱烈な恋に陥いります。

ジョーダンはファシスト軍への最後の抵抗を試みるために、マリアと別れて一人立てこもります。そして 「誰がために鐘は鳴る」は、次の文で終わります。

「ロバート・ジョーダンは木陰に伏せて、注意深く細心に気を引き締めて、両手をしっかり支えていた。彼は敵の士官が、松林の端の木々と草地の緑の斜面との境目のあたり、日の光のあたっているところまでくるのを待っていた。彼は、森の松葉の散り敷く地面に押しつけられた心臓が、激しく鼓動するのを感じることができた。」