首都「ワシントンD.C.」とは正式には「Washington District of Columbia」。どの州からも独立した連邦直轄地の特別区です。世界でも数少ない計画都市で政府機関、各国大使館、記念碑的建造物、ナショナルギャラリーなどの美術館や博物館、全国的組織をもつ各種の専門機関や協会の本部があります。同時に長い間、連邦直轄地として住民の意向が行政に反映されなく、首都を代表する華麗な地区の背後に貧困と荒廃に瀕する地区もあります。
首都建設の歴史です。ワシントン大統領(George Washington)はフランス系の陸軍士官で技師であったピエール・ランファン(Pierre L Enfant)に設計を依頼します。ランファンはバロック(baroque)式造園法の影響を受けていたようです。設計案にはバロックの壮麗さが反映しています。1793年9月に連邦議事堂の礎石が据えられ、さらに大統領官邸(White House)などが続きます。
1800年10月にはフィラデルフィア(Philadelphia)から首都が移ってきます。初期のワシントンD.C.は荒野でありました。そこに首都を設置したので、当初はさまざまな困難が問題があったといわれます。当時ワシントンD.C.を訪れた人々からは「途方もなく間隔が広い街」(City of Magnificant Distances)とか「荒野の都市」、「みじめな小屋の都市」などと揶揄されたようです。蒸気機関車や電信が出現するまでは、遠くて不便であったという理由で首都の移転運動も起こったほどです。
ランファンの設計で中心となったのは連邦議事堂、モール(Mall)、大統領官邸、それを取り巻く建物群です。この二つの建物から放射状の大通りは議事堂を基点とする格子状の街路網と組み合わされています。東西方向に走る街路にはアルファベット文字が、南北方向の街路にはアラビア数字が、大通りには各州の名がそれぞれつけられています。公園も多く最大のものはロッククリーク公園(Rcck Creek ParK)で動物園もあります。
この特別区の住民には低所得者、障害者、高齢者がかなり含まれ、政府の援助を必要としています。その反面、多くの政府職員やサービス業者は郊外からメトロをつかって通勤しています。
有名な高等教育機関ですが、イエズス会系のジョージタウン大学(Georgetown University)、バプテスト系のジョージワシントン大学(George Washington University)、メソジスト系のアメリカン大学(American University)、アメリカ・カトリック大学(Catholic University of America )、黒人のためのハワード大学( Howard University)、聴覚障害のギャロデット大学(Gallaudet University)などがあります。
研究や科学調査の中心は、国立公文書館(National Archives and Records Administration, NARA)や議会図書館(Library of Congress)があります。議会図書館世界一の蔵書を誇ります。その他、スミソニアン協会(Smithsonian Institution)は自然科学や法律関連図書でこれまた世界最大の規模をもっています。英国の化学者スミソン(James Smithson)の遺贈した基金によって1846年に設立されました。