網走郡美幌町の美幌小学校では文部省唱歌を歌った。教科書はすべて唱歌ではなかったかと思えるほどである。明治43年「尋常小学読本唱歌」というのが最初の音楽の教科書らしい。文部省が編集したものを唱歌というようである。
なぜ小生が歌に関心を向けたかは、小さなリードオルガンを弾く先生に小学校で教わったからだ。「故郷の空」、「麦畑」、「蛍の光」を歌った。こうした歌からスコットランド(Scotland)を意識することはなかったが、やがてスコットランドという地名だけは、終生記憶から消えることはなかった。
文部省唱歌にスコットランド民謡が取り入れられた理由はわからない。だが、センチメンタルな歌詞とともに日本人の琴線に触れるような旋律(melogy)が日本人に受け入れられたと思われる。
スコットランド民謡の「故郷の空」の旋律には、長音階のド(C)から四つ目のファ(F)と七つ目のシ(H)の音はでてこない。いわゆる「ヨナ抜き」という特徴である。ドレミファソラシは楽譜では「CDEFGAH」と書いたり読んだりする。ドイツ語読みが多い。「ヨナ抜き」では「CDEGA」となる。
後年、琉球に住むことになったが、琉球民謡というのか島唄というのが、独特の旋律であることに気がついた。それは、旋律が「ヨナ抜き」ならぬ「ニロ抜き」なのである。長音階の二番目のレと六番目のラが抜かれるので「ニロ抜き」なのである。「ニロ抜き」は「CEFGH」である。「てぃんさぐの花」を是非聴いて欲しい。歌詞も味わいがある。
筆者は音楽はずぶの素人であるが、唱歌や民謡は大好きだ。叙情歌しか教科書に載っていなかった教科書のお陰か。スコットランド民謡のような旅情に富む歌、島唄のような哀愁を帯びた曲に出会ったことは幸いなことだと思っている。