ユダヤ人と日本人は世界史の中で寄り添うような関係を持ったことがあります。日露戦争の経緯にその関係がうかがわれます。
戦争の遂行のために日本は膨大な戦費を必要としていました。そのために国債を発行し外貨を得ようとします。当時の日本銀行副総裁、高橋是清はそのための外貨調達に非常に苦心したといわれます。投資家からは日本の敗北予想、国債支払い能力の不安などで外貨調達は困難を極めます。
高橋らの努力で、帝政ロシアを敵視するユダヤ系のアメリカ人銀行家ジェイコブ・シフ(Jacob H. Schiff)は、500万ポンドの外債を引き受け、その後も追加の融資をします。融資の理由はロシア国内での反ユダヤ主義(Antisemitism)に対するシフらユダヤ人の抗議であったといわれます。反ユダヤ主義の例は、ポグロム(pogrom)というユダヤ人への集団迫害です。
日本は3回にわたって7,200万ポンドの公債を追加募集します。シフはドイツのユダヤ系銀行やリーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)などに呼びかけ、この募集も実現するという幸運に恵まれるのです。日本はシフなどのユダヤ系投資家によって軍費を調達し日露戦争を遂行できます。日露戦争は、帝政ロシア崩壊のきっかけとなったといわれます。
シフは実業家として成功します。同時に彼は寄附や慈善とか形で同胞に貢献します。ヘブライ・ユニオン・カレッジ(Hebrew Union College-Jewish Institute of Religion)の創立に援助します。このカレッジは、聖職者を養成するユダヤ教改革派の神学校です。その他、コロンビア大学(Columbia University)とかイスラエル工科大学(Israel Institute of Technology)などにも多額の資金を提供したことで知られています。
今もアメリカにあるまざまなユダヤ人の団体、例えばアメリカシオニスト機構(Zionist Organization of America: ZOA)とかアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs Committee: AIPAC)アメリカとイスラエルの関係を維持する強力ななロビイスト団体であると同時にイスラエルに多額の支援をしています。