認知心理学の面白さ その四十一 セルフヘルプと構造化された技法

エリス (Albert Ellis) の論理情動行動療法(Rational Emotive Behavioral Therapy: REBT)は、認知の中でも評価的認知に注目すること「理にそぐわない信念」とか思い込みを現実的で柔軟な願望に変えていくことを重視するものです。より健康な考え方に変えるための指針として、その考え方が「論理的か,実証的か,有益か」をチェックするのです。エリスさらにその指針にそって、新しい健康な考え方を再構築し、それが自分に身につき腑に落ちるまで日常生活の中で練習するという過程を強調します。この考えを「認知枠組みの再構成 (cognitive reconstruction) 」と呼びます。

REBTには、セッションを行う上で以下の特徴があります。
1.  セルフヘルプ(self-help)
REBTは健康な思考・感情・行動の主体は自分自身であり、REBTの技法と発想を身に付け、自らが日常生活で絶えず実践しつづけていくことを重視する。クライエントは、自らが己の「カウンセラー」になることを目指す。
2.  構造化された技法
REBTでは問題を具体的に絞り込んで把握していくためのABC理論(A=できごと、B=信念、C=結果[感情・行動])というプロセスが標準ステップとして構造化される。REBTが学習・実践の両面において取り組みやすく、誰が取り組んでもほぼ同一の効果が期待できることを意味する。
3.  日常生活での実践の重視
カウンセリング・セッションや授業以上に、問題を日常生活で自分自身で取り組んでいくことを重視する。

ABC理論により問題を具体化していくこと、各ステップを適切に遂行することを支援する標準ツール例えば、「セルフヘルプ・フォーム(self-help form」があります。これを使うことで初心者でも早い段階から一人で取り組むことができるとエリスは言います。