認知心理学の面白さ その三十四 ヴィゴツキと「発達の最近接領域」

ヴィゴツキが発達心理学者としての名声を確立した学習理論に「最近接発達領域」(Zone of Proximal DevelopmentーZPD)があります。「最近接発達領域」とは、とっつきにくい用語ですが、「最も近接している発達の領域」ということです。これでもなお分かりにくいのですが、子供達の仲間など他者との関係において「あることができる=わかる」という行為の水準、ないしは領域のことです。

どういうことかといいますと、私たちは仲間の助けなしにわかること、やれることと、仲間の助けがなくてはできないことがあることを知っています。子供も勉強しているときに、「これはできる、できそうだ、できない」という感想を持ちます。「できそうだ、できるかもしれない」という領域のことが「最近接発達領域」ということのようです。

このように考えると,子供が「できるかできないか」くらいのレベルの課題 を与えることが、発達にとって重要であると一般化されて考えられるようになりました。つまり、子供を成長させるためにはこの「できるかできないか」という水準の隔たりの部分、すなわち「最近接領域」にアプローチすることが重要であると考えられてきたのです。

「最近接発達領域」理論に基づけば、子供の成長のためには、その「できるかできないか」というレベルの課題を与えることは,子供の好奇心を刺激し,興味や関心を引くためにも有効であると言えると考えられます。「あることがわかってきた」とか、「できるようになった」、ということが発達と呼ばれます。

大人も子供も、教師という他者による教えによって学習が完成すると考えがちです。しかし、私たちはこのような大人と子供の学習に対する固定観念に縛られてはならないといえます。