マックス・ベルトハイマー (Max Wertheimer)という心理学者のことです。ベルトハイマーはオーストリア-ハンガリーで生まれたユダヤ系の学者です。第一次大戦でドイツ陸軍に大佐として参加します。終戦後はベルリン大学で知覚の研究に従事します。やがてケーラーやコフカ (Kurt Koffka)とともにゲシュタルト心理学の発展に貢献します。
ナチスのユダヤ人迫害を知るとベルトハイマーは家族とと共にチェコスロバキア (Czechoslovakia) の首都プラハ(Prague)にあったアメリカ領事館よりビザを取得し、 1933年9月にアメリカに亡命することになります。その後、ニューヨークでNew School for Social Researchという大学でゲシュタルト心理学の研究活動に従事します。
ゲシュタルト心理学では、あるまとまりを一つの形態(gestalt) として人々に印象づけ、それによって人々は判断したりします。そのためにときに実際とは違う認識をするのです。錯視はその一例です。ある若い婦人が老婆の横顔になったりします。「人はゲシュタルトごとの認知を自然に優先してしまう」のです。
こうして脳のクセを知っておくと、錯覚や安易な経験則への依存で失敗をすることがなくなります。「これは合理的な判断だろうか?」と冷静に考えるきっかけになります。ゲシュタルト心理学の果実は、商品のディスプレイとか誌面やウェブサイトのレイアウト、コンピューターのヒューマン・インターフェイス(human interface) など、いろいろな形で応用されています。ヒューマン・インターフェイスは見る側にとって自然に認識されるので目に心地よいのです。個別的な感覚刺激によってではなく、全体的な枠組みー形態によって人は物事を感じるのです。