文化を考える その25 街角の風景 その5 電信柱

イタリアの古い街を訪ねたとき感銘したことがある。それは空が広いということだ。オリーブや葡萄畑が広がり、ローマ(Rome)の松が並んでいる。そこを車でのんびりドライブすると、丘の上に造られた城塞都市が見える。オルヴィエート(Orvieto)サンジミニャーノ(San Gimignano)などががその代表的な街である。

オルヴィエートの城門を入るとそこは旧市街。劇場、美術館、聖パトリツィオ(Patrizio)の井戸、ドゥオーモ(Duomo)を持つ聖堂がある。また街の地中を掘り進むだけで遺跡が出てくるという。エトルリア人(Etruria)の墳墓もある。

細く古い石畳を歩くと突然広場がある。人々はのんびりと会話している。お年寄りも観光客も一緒だ。しばらくぼんやりしていると、電信柱がどこにもないことに気がつく。空が広いということは電信柱や電線がないことなのだ。

電線は水道とともに下水道のある地中に埋められているという。このような古い街並みに電信柱は全くそぐわない。洗濯物がひもに吊されて干されている。花の鉢も窓際にある。石造りの街並みは改築がほとんど行われないから電線は地中に埋め込みやすいといわれる。もともと下水道が発達したのがヨーロッパ。避難路としても役割を果たしていたようである。

我が国の観光地からもだんだんと電信柱がなくってきた。例えば滋賀県長浜市の駅前の黒壁のまちづくりにより、電信柱が地中に埋められている。地中化するには時間と費用がかかる。経済性、利便性、安全面などから電信柱がまだま多いのは確かだ。道路計画の当初から地中化する発想が必要だ。美観を台無しにしているのは電信柱である。都市の景観とか美にもっと関心を持ちたいものである。

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