旧約聖書の時代の女性は、男性優位の伝統と文化にあって辛い地位にありました。その中でも男性に伍して傑出した指導者や預言者、そして家長のように家族をとりしきった女性がいたことを既に紹介しました。エリザベート(Elizabeth)、レベカ(Rebekah)、デボラ(Deborah)などの女性です。あたかも祭司のような役割を担った女性です。そうした女性の存在は今に至るまで宗教の世界にも及んでいます。
あまり聞き慣れない言葉かもしれません。それが「万人祭司」(the priesthood of all believers) です。「万人祭司」とは、プロテスタント教会の根本的な教義の一つのことです。その原典は新約聖書の聖句にあり、すべてのキリスト者が祭司であるというキリスト教の教えのことです。
宗教改革者(Ecclesiastical reformer)といわれたマルティン・ルター(Martin Luther)は、1520年その著書「ドイツのキリスト者貴族に与える書」 (To the Christian Nobility of the German Nation) の中で、神の目からみれば、キリスト者がすべて「祭司ーPriest」であると主張したのです。
ルターが「万人祭司」の考え方の根拠とした聖句は、「あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、聖なる国民、神の庇護にある民です(第一ペテロ2:9) 」です。
‘You are a chosen people, a royal priesthood, a holy nation, God’s special possession.
さらに、「私たちの神のために、この人々を王国とし祭司とされました。彼らは地上を治めるのです(黙示録5:10)」という箇所も「万人祭司」とか「全信徒祭司」という考え方の根拠となっています。
ルターがなぜ「万人祭司」ということ主張したかには理由があります。中世カトリック教会には、ローマ教皇によって叙任された「聖職者」が神とつながり、一般の信徒は聖職者を通してのみ神につながると考えられていたことです。さらに「霊的」(Spiritual) と「世俗的」(Secular)という二つのグループにキリスト者が分けられていると考えていたのがカトリック教会でした。彼はこうした教条的なあり方を批判します。
「祭司」ですが、初代キリスト教会では長老(Elder、Presbyter)、監督教会や聖公会では司祭(Priest Clergyman)、メソジスト(Methodist)やバプテスト(Baptist)教会では牧師(Pastor, Minister) という名称を使います。
宗教改革後のプロテスタント諸派には「聖職者」との呼称や役割は存在しないとして、祭司は、教役者とか教職者としての意味で使われ、教会の指導にあたるとされます。
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