尚武館道場には坂崎磐音の二人の筆頭弟子がいます。磐音が手塩にかけた重富利次郎と松平辰平です。長らく尚武館に住み込み、多くの門下生を指導し、紀伊藩の剣術指南でもある磐音を補佐しています。
磐音は二人が所帯を持ち、暮らしが立つように仕官するのを気にかけています。稽古の後、磐音がなにかを言い出したい思いの二人に問います。
磐音 「どうした、なにか言いたいことがあるのではないか。」
利次郎 「数日前のことです。おこん様より辰平とそれがしに五両ずつ紀伊藩の手伝い料を頂戴いたしました。」
磐音 「ほう、それはよかった。そなたたちの暮らしが立つほどの手当が出せればよいのだが、、」
磐音はおこのんのやりくりの苦労を思った。
利次郎 「辰平もそれがしも思いがけないことで、初めはお断りしました。ですが、おこん様がどうしても亭主どのの気持ちを受け取ってくだされと申され、二人して有り難く頂戴しました。」
磐音 「亭主の気持ちな。相手はこちらの気持ちまで読みおるからのう。」
利次郎 「若先生はご存じないことでしたか、、、」
磐音 「ふっふっふふ、亭主はのう、女房どのの掌で踊らされているくらいが丁度良い。円満ということかのう。」
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