音楽の楽しみ その31  合唱曲の数々 「国民音楽派」

なぜか我が国でもロシア民謡はしばしば歌われます。ロシア民謡とは、もともとロシアの民俗や伝承に基づく叙情歌を指すとされます。これが日本人の感覚の琴線に触れるのかもしれません。北大大合唱団もロシア民謡を何度も歌ってきました。

フォークロア (Folklore) は、風習や伝承などを対象とした人々の日常生活文化の歴史をとらえる学問領域です。特定の国や地域や民族における、民俗音楽 (Folk music)もそれに含まれます。フォークロアとしてのロシア民謡を中心的に担ってきたのは農民といわれますが、やがて職人など農民以外の社会層によっても歌われてきたのがロシア民謡といわれます。

「ロシアを知る辞典 (平凡社) 」によると、ロマノフ王朝時代は、近代化を促進し西洋の古典音楽をロシアに定着させることを目指したとあります。やがて「国民音楽派」と呼ばれる人々は、音楽芸術の民衆化を図ろうとします。その創作の源泉は、ロシア民衆のなかに音楽の原点を求めることでした。彼らの作品の題材をロシアの歴史、民衆生活、叙事詩、民話、信仰、農耕儀式などに求め、民族的過去を美化したり、農奴的な現実を批判していきます。そうした人々の中心が作曲家のグリンカ (Mikhail Glinka)です。

グリンカは西洋音楽の手法に異国情緒を取り入れる作曲手法などによって、五人組といわれるバラキレフ (Mily Balakirev) 、キュイ(Cqsar Cui) 、リムスキー・コルサコフ (Nikolai Rimsky-Korsakov) 、ムソルグスキー (Modest Mussorgsky) 、ボロディン( Alexander Borodin) らの作曲家に大きな影響を与えます。

現在、ロシア民謡として知られている曲は、近代になってからグリンカの流れをくむ国民音楽派の作曲家たちが取材して採譜し編曲しています。それを演奏者を含む音楽家たちが、メロディーや歌詞に手を加えてアレンジしています。既に取り上げた「カチューシャ」「カリンカ」、そして次回で取り上げる代表的なロシア民謡の一つ「ヴォルガの舟歌」もそうです。

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Alexander Borodin