私が自閉症に出会ったのは沖縄の幼稚園で働いていたときです。不思議な行動をする幼児がやってきました。園児も少なかったので受け入れることにしました。それから私の勉強が始まったようなものです。石井哲夫氏の「自閉症児がふえている」という本を見つけました。1969年頃でDSMの第2版が出た頃です。この「自閉症児がふえている」というタイトルは、実は、DSM-2の診断基準によるところが大きかったことを後で知ることになります。
現在のDSM-5では、自閉症スペクトラム障害 (Autistic Spectrum Disorders: ASD)は、様々な神経発達症(neurodevelopmental disorders)の中で分類された一つとされています。これまでの広汎性発達障害 (pervasive developmental disorders) を再定義しています。このように精神医学者や心理学者の中で自閉症の定義が変遷してきたのですが、保護者や子供にとっては一体どのような恩恵があったのかと考えてしまいます。
全米精神衛生研究所 (National Institute of Mental Health: NIMH) の所長を13年間勤めたインセル (Thomas Insel) は次のようにいっています。 「NIMHはDSM-5の診断カテゴリを黄金律としては扱わない。むしろ症候を基準としたカテゴリとして援用する。」こうしたコメントに対して、アメリカ自閉症協会も非常な賛意を表明しています。インセルは、全国自閉症協議会 (Interagency Autism Coordinating Committee: IACC)の委員長としても活躍する人です。
国際的な診断がインフレに向かい始めたのは、DSMの広範囲な普及にあると考えられます。我が国もDSMの影響を受けて出版関係だけでなく、医療関係や製薬会社などに広く需要が拡大していきます。既述しましがた、50年位前、ASDは10,000人に3〜4人だと言われてきました。しかし今、日本では1,000人に1〜3人の割合で生じているといわれます。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)によれば、およそ68人に1人がASDであると確認されています。
発生率とは、どこまでをASDの範囲とするかによって違ってきます。それにしても発生率が増加してきたのは間違いありません。もし診断基準が拡大したのなら、なぜ以前はそんなに狭いものだったのか、という素朴な疑問が沸いてきます。疑わしきものは、何らかの診断をして処方するという機運が高まってきたのです。
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自閉症診断のグラフ