インフレーション (inflation)とは望ましい現象なのかを考えています。普通、インレーションとかインフレとかは、物価が上昇し通貨の価値が継続的に下がる現象といわれます。日銀券を大量に印刷すると物の値段が上がる、というように理解すればよいでしょうか。その逆がデフレーション (deflation) です。一体市場にどの位の貨幣を適量に流通させればよいかは、貨幣論者にお任せすることにします。
インフレは経済社会だけに見られる現象ではありません。精神医学の世界にもあるのです。アメリカ精神医学会 (American Psychiatric Association: APA)という学会があります。その創立は1844年とあるように伝統のある学会です。この学会が発行する本に「精神障害/疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-DSM) があります。DSMは日本でも翻訳されています。DSMの出版は厳格な著作権が管理され、年間500万ドルという収入を上げています。世界各国での翻訳や出版から得られる収入です。
このマニュアルの初版が出たのは1952年です。その後1968年、1974年、1980年、1987年、1994年、2000年と順次改訂が加えられ、2013年に出たのが現在のDSM-5です。一般的にアメリカでは病院やクリニック、さらに保険会社は患者を治療するためにDSMの診断を要求しています。このようにDSMは臨床面では広く用いられ、また研究目的のために患者の状態をカテゴリ化して診断基準が検討され改訂されています。
幾たびとマニュアルの改訂が続く歴史は何を物語るのかが私たちの関心をひきます。DSM-5は良くまとめられているという評価がある一方で、なお多くの懸念すべきことも多いといわれています。それは診断の基準が、なにが最も信頼性や妥当性を有するのかについて主観的な判断に頼っているといわるのです。診断の不一致をいかに収束するかということがマニュアルの改訂に現れていると思うのです。
私たちの心の発達にはいろいろな要因があります。生育史、両親との関係、心的外傷 (psychological trauma) 、人間関係のストレス、過労、睡眠不足などが発達に影響してきます。素人考えなのですが、精神的な疾患というのは、人間社会の規範にあった振る舞いや発言をしているかとか、日常生活に支障をきたすことがないといったことを手本として診断されるようです。多くの精神科の医師も発達の研究者も、個々人の心の発達の基底にあるものが多様なために診断に悩まされているのは容易に想像できます。そこで「精神障害/疾患の診断・統計マニュアル」といったものが広く出回るとことになります。
「デフレからの脱却」は、精神障害の現状になにをもたらしているかを数回にわたり取り上げます。
[contact-form][contact-field label=’お名前’ type=’name’ required=’1’/][contact-field label=’メールアドレス’ type=’email’ required=’1’/][contact-field label=’ウェブサイト’ type=’url’/][contact-field label=’コメントをお寄せください’ type=’textarea’ required=’1’/][/contact-form]