犬が主人公の噺をもう一席お付き合いいただきたい。江戸の台東区には多くの寺社仏閣がある。浅草寺、東本願寺、寛永寺、待乳山聖天本龍院などが知られている。台東区は、江戸幕府の御府内となっていたので、最も人口が密集していた地域であったといわれる。寺社が多かったわけである。
江戸は蔵前の八幡宮の境内。一匹の真っ白な犬がいて、近所の人からは「シロ」と呼ばれて可愛がられていた。当時、毛並みの中で白犬はなかなかいなかった。ある時、参詣人がこの犬を見かける。皆不思議そうに眺めていた。参詣人はシロを見て「綺麗だな、」とか「可愛いな、、」と褒める。そんなことで、シロは人間に生まれ変わりたいと思うようになる。そして、その日からシロは八幡様に百日のお詣りを始める。
100日満願の日、白犬は晴れて人間に生まれ変わることができる。
ところが体を見ると真っ裸、服を探してフラフラ歩きようやく近所の人から服を貰う。周りの人々は忙しそうに働いているのを見て、自分もどこかで奉公口を見つけ働きたいと考える。そこで口入れをしている上総屋の旦那に連れられて、シロを可愛がってくれたご隠居さんのところへ連れていかれる。
ご隠居の家では、人間になったシロは地べたに座ったり、顔を足でなでたり、クンクンなりたりして注意される。台所ではお茶を沸かす
鉄瓶がちんちんなっている。それにつられてチンチンするという案配である。
ご隠居 「どうしてそんな格好をするんか?」
シロ 「自分もそれが得意なんです」