ある二人組男。この兄貴分が所帯をもち家を建てた。その引越祝いにと、二人の男は水瓶を贈ろうと考える。だが、銭を持たない二人。いろいろ考え、古道具屋なら安いものがあるのではと歩き回る。当然そんな水瓶があるわけがない。
困っていると、ある古道具屋の主人がこの瓶なら金はいらないという。二人は喜ぶが、なぜかその瓶には水がいっぱい張ってある。早速、差し担いで運ぼうとする。
道具屋 「あんた方、それを何に使いなさる?」
二人組男 「水瓶だよ」
道具屋 「そりゃいけねえ。見たらわかりそうなもんだ。おまえさん方、毎朝あれにまたがるだろう」
二人組男 「ん……? 毎朝またがる? 」
よくよく見ると、果たしてそれは紛れもなく、もとの肥瓶であった。しかし、タダという言葉には勝てず、二人はその瓶を引き取る。そんなわけで瓶を手に入れた二人、そのまま渡したらバレるであろうから、まず瓶に水を張り、湯屋に行ってさっぱりして兄イの新宅に瓶を持っていく。
何も知らず、もらった兄イは大喜びし、お礼にと酒を振る舞いご馳走をしてくれる。ご飯に焼き海苔、おしたし、香の物、湯豆腐。うめえ、うめえと食っているうちに、ふと気づいて二人、腰が抜けた。出される料理はどれもその瓶から汲んだ水であつらえられている。