ウィスコンシンで会った人々 その48 与太郎噺

落語にはいろいろな人物が登場する。「八っぁん、熊さん、」などと並ぶ代表的なのが与太郎である。性格は八五郎に似ている。

例外なくぼんやりした人物として描かれる。性格は呑気で楽天的。何をやっても失敗ばかりするため、心配した周囲の人間から助言をされることが多い。こうしたキャラクターから、与太郎の登場する噺は爆笑ものが多く、与太郎噺と分類される場合もある。さらに「愚か者」の代名詞となっているが、決して憎めない存在だ。長屋の者は与太郎をかばうことも決して忘れない。

「孝行糖」という演目では与太郎は親孝行という筋書きになっている。孝行によって殿様から褒美の青ざし五貫文を頂戴する。五貫文とは一両一分で十万円くらいと云われる。長屋の者は、五貫文を元手に与太郎にお菓子の「孝行糖売りの行商を教える。自立させようというのだ。そして与太郎に客寄せの台詞教える。「チャンチキチ スケテンテン♪ 孝行糖、孝行糖〜」。

「錦の袈裟」という演目では与太郎にしっかりものの妻がいる。与太郎に錦の袈裟をふんどしをつけて男衆の集まりに送り出す。そして吉原に乗り込むが、与太郎は女達にすっかりもてる。与太郎を殿様だと勘違いしたからだ。周りの男は与太郎のもて振りにすっかりあてられる。

「牛ほめ」だが、新築の叔父の家を訪問し、父親に教えられた通りにほめ言葉を並べて感心されるが、最後に牛を見せられて失敗する。「大工調べ」では腕っぷしのいい大工として登場し、滞納した店賃のカタとして没収された道具箱を取り返すべく、大工の棟梁の助言で、あこぎな家主を相手に訴訟を起こす。お奉行も味方しようとするのだが、ばか正直なためになかなか決着しない。「つづら泥棒」は与太郎が泥棒を試みる数少ない噺。夜自分の家に泥棒にはいるという大失敗をする。

「佃祭」にも与太郎が登場する。佃島の祭りの帰りに渡し船が転覆して死んだと思われた近所の旦那の家に、ほかの住人たちに連れられて長屋の月番で代表の1人として弔問に訪れる与太郎。だが、悔みと嫌みの区別がついていなかったり、最初の一言が「このたびはどうもありがとうございます」だったりで、厳粛な雰囲気をぶち壊しにする。

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