ウィスコンシンで会った人々 その39 「石の効率」

「石の効率」ということを考える。「二線敗線、四線勝線」という格言がある。十九路盤ではできるだけ中心に向かって石が打たれる。武宮正樹九段はかつて「宇宙流」という戦法を使い囲碁界に革命のような衝撃を与えた。彼は、碁盤の中心を宇宙にみたて、石が中央に向かい地を作ることを提案した。

地を取ろうとすると、どうしても隅や辺に石が向く。時に二線を必要以上にハウこともある。二線では地が1目ずつしか増えないのに相手の厚みがそれ以上に増し良くないのである。それとは対照的に四線をノビていくのは、地が3目ずつ増えていくので効率がよい。これを「石の効率」という。

四線を重視するのは、囲碁の布石の段階である。定石などが形成される。両者互角の情勢である。中盤の戦いが終わると終盤に入る。このとき、二線のハイは極めて大きなヨセとなる。だから格言はどのような場合にも当てはまるとは限らない。序盤は四線、終盤は二線と覚えておけばほぼ間違いない。

さらに、「石の効率」だが、効率が良いというのは石が働いている状態のことである。効率が悪い石とは、ダンゴのように固まった石、駄目
詰まりになったような石、「空き三角」になったような石をいう。「空き三角」の石とは相手には、全く響かない無駄になっている状態のことをさす。上手はこのような効率の悪い石の形に持ち込もうとする。

相手の厚みに近づきがちなのが下手。相手の地が大きく見えるからである。「ヤキモチ」を焼いて、相手の陣地に石を打ち込んで地を荒らそうとする。だが、大抵の場合こうした石の落下傘部隊は召し捕られるか、追い立てられてバンザイとなる。相手の石を自分の厚みに誘い込むというのが上手の戦術でもある。囲碁ではヤキモチをやくのが、最も石の効率が悪くなる実戦心理といえる。

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