囲碁は相手と交互に打つゲーム。時に相手の良い手には敬意を表し、引き下がるのが良い。それを勘違いして逆襲でもしようならこっぴどく痛めつけられる。だから、「一目置く」のが囲碁の基本である。一歩譲るとか遠慮するのである。囲碁の格言は人間の機微に通じて奥が深い。
囲碁にも将棋にも急所がある。相手にとっての急所は自分の急所であり、重要な着目点となる。急所をはずしては相手に楽をさせるばかりか、形勢を損じる。戦争を考えても急所の大事さは同じ。急所とは自分の弱点である。逆の場合もある。問題はどちらが先に打つかである。幅広く陣地を拡大しようととして、急所を逃しては勝機を逸する。「大場より急場」という格言も同じ意味である。
下手は得てして攻撃を優先しがちである。攻撃とは反撃を食らわないように自陣を備えることから始まる。急所とか要所を押さえておけば安心して攻撃にでることができる。自分の大切な所、相手が攻撃を狙うところが急所である。
囲碁の戦術を戦争と比較してみる。太平洋戦争の戦略上の要諦とは、南方の石油や食料資源を確保することであった。そのためには、ベトナム、フィリッピン、台湾、琉球列島を結ぶ空海圏が急所で、それを守ることであった。しかし、守備範囲が伸び過ぎてこの急所の備えを怠ったために輸送船はことごとく潜水艦の餌食となった。
囲碁ではしばしば捨石を使う。捨石によって陣形を立て直し、先手を取ることが多い。捨石には役割がある。決して無駄になるのではない。