ウィスコンシンで会った人々 その17 成年後見制度と人権

今新宿区で、発達障害者の人権活動について母親の学びの集まりに参加している。そこでの話題となっているのが「Where human rights begin」(人権とはどこから出発するのか)という冊子である。これは、第三回世界成年後見制度大会(The 3rd World Congress on Adult Guardianship)での基調報告である。編集したのは、The Guardianship Association of New Jersey, Inc. (GANJI)という団体である。

障害者の親は、障がいというハンディキャップを負って生を享けた子を残して先に死ねない、という思いを誰もが持つ。だがそうは言え、親が先に死ぬことのほうが多い。「願わくば親亡き後、グリーン車に乗せて天国まで行かせたい」と云う親もいる。そのためには、まずは親が法定後見人になることが多いようである。

しかし、「人権とはどこから出発するのか」という成年後見制度の冊子を読むと、人権の大切さや重要さが溢れんばかりにわかりやすい表現(plain text)で強調されている。ちなみに法務省の「成年後見制度」を読むと、不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議など、判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度とある。障害者の人権などは一言も触れていない。

人権は、1215年のイングランドの自由の大憲章(Magna Carta or Great Charter of the Liberties of England)に始まる。その後1948年に国連本部で世界人権宣言が採択された。我が国は当時、国連に加盟していなかったので批准していなかった。この宣言を起草した一人がエルノア・ルーズベルト(Eleanor Roosevelt)である。彼女は、合衆国第32代大統領のフランクリン・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)の妻であった。彼女は合衆国国連代表、婦人運動家、文筆家として知られている。

エルノア・ルーズベルトは次のように訴える。
結局のところ人権はどこから始まるのでだろうか?それは、家庭に近い小さな場所から始まる。その場所は、家庭にとても近くにあり、あまりにも小さいので世界地図上で見ることはできない。地図に載っていなくとも人々にはそれぞれの世界がある。それは、住んでいる自宅周辺、通学する学校や大学、働いている工場や農場、あるいは事務所である。そのような場所で、男性、女性、子供の誰もが差別されずに同等の正義、機会、平等を求めている。これらの権利は、地図に載っていないような小さな場所で守られなければ意味がない。家庭の近くで人権が守られるよう市民が共に活動しなくては、人権が守られている場所をあてもなく広いこの地球上で探すことになる。

人権は誰にとっても共通なもの。人権は発達障害のある人が被後見人であってもなくても適用される。人権と義務は教えられ、サービス計画と日常生活での様々な機会や実践で個人が学びとるものだ。世界人権宣言は、普遍的な人権についての素晴らしい考え方とそれに基づく宣言である。このようなことを学んだのが母親の学びの集まりであった。

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Eleanor Roosevelt