ウィスコンシンで会った人々 その9 フリースクールが義務教育の場に

かつて通信制高校で働いたことがある。そこで学ぶ生徒だが、過去にいろいろな苦労をしたか、今も苦労している者であった。中には非行によって高校を退学させられた者、保護観察処分の生徒もいた。また、長年不登校になっている生徒もいた。そしてフリースクールに通う生徒もいた。こうした生徒に共通することは、まだどこかに学びたという動機があることである。高校卒の認定を受けたいというのが通信制高校を選んだのである。

ようやくフリースクールなど、小中学校以外にも義務教育の場としようとする法案が、7月中の国会提出を目指して動き出した。超党派の議員連盟が5月27日、総会を開いて概要を了承し6月中に条文としてまとめることを決めた。今国会で成立させ、施行を2017年4月としようとしている。この法案だが「多様な教育機会確保法」となるようである。

現在は、公的にはフリースクールに通わせても就学義務を果たしたとみなされていない。その一方で1992年には不登校の増加を受け文部省が、フリースクールで勉強した場合も在籍先の校長の判断で出席と扱えるよう通知した。あけすけな言い方だが、学校に来ていなくても出席扱いにして卒業させている。制度と実態は矛盾しているのである。このズレを解消するのが今回の提案といえる。

義務教育の歴史であるが、1886年の小学校令では尋常小学校修了までの4年間を義務教育期間とした。1941年初等教育と前期中等教育を行う国民学校令が定められ8年間の義務教育となった。現在の義務教育はそれ以来続いる。それ故、フリースクールなど学校以外での学習の機会を制度化するという新しい段階に入るといえる。

アメリカやカナダで盛んに行われるホームスクール(home school)は、フリースクールの一形態とも考えられる。ホームスクールでは「個別の指導計画」をつくり、市町村の教育委員会に提出することになっている。また、学びの成果を確認するために、学力テストも受けるように指導される。このようにして、保護者が子供に教育を受けさせる就学義務を果たすことが科せられている。

フリースクールの授業料を賄うために、国からの支援としてバウチャー制も取り入れられるだろうと察する。フリースクールの経営者や保護者には、学校に代わって子供に「多様な教育の機会」を提供する特徴ある学習メニューを用意する責任がかかってくる。

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