Big Historyは従来の歴史観や方法が異なり、様々な分野の研究領域にまたがっていることを特徴としている。Big History派の人々は、これまでの歴史を「微視的歴史」(microhistory)と呼んでいる。中には「浅い歴史」(shallow history)と呼ぶ者もいる。歴史学者の2/3は、過去250年の間の歴史に特化した研究をしているというのである。確かに人間誕生からの歴史は、そんな短期間のものではないのである。
しかし、ある歴史学者は云う。Big Historyの原則は、あまりにも巨大な視点を過剰に捉えすぎていると。さらに”Big Historyは「壮大な物語」(grand narrative)を演じ、いわば大きな剣を振り回しているようなものだ”と批判する。他方、Big History派も従来の歴史はあたかもナッツをひいて上等な粉をつくるかのような作業をしていると主張する。なにはともあれ、Big Historyは長い展望に基づく傾向とか過程に主眼を置き、歴史を形成した人物や出来事を究明するような従来の手法による歴史研究ではない。
シカゴ大学(University of Chicago)のチャクラバティ教授(Professor Dipesh Chakrabarty)が云うには、Big Historyは従来の歴史観に比べて政治色が薄いのが特徴だという。何故ならBig Historyは人々過去へ誘う性格があるという。より、証拠とか確証となるものを重視するからであると。従来の歴史研究者が重視する記録や文献、その他化石とか道具、生活用具、絵画、構造物、生態学的な変容や遺伝的な多様性といったことではない。
Big Historyのテーマであるが、クリスチャン教授によれば、これまで現代に至る期間は140億年のことを理解しようとする。Big Historyはこの140億年という「人類の物語」(human story)を科学の進歩に照らして考え、炭素元素や遺伝子の分析などの方法を用いることである。時に、数学のモデルを使い社会構造の仕組みの相互作用を究明しようとする。コネチカット大学(University of Connecticut)のターチン教授(Professor Peter Turchin)は数学モデルによる学際的研究の手法である「クリオダイナミックス」(cliodynamics) を唱道している。クリオダイナミックスは数学モデルによって帝国の隆盛や社会不満、市民戦争、国の滅亡などを究明する。個人の行動と社会や環境という要素の混合を数学モデルによって説明する。
2008年に発行された”Nature誌”でターチン教授は、「我々が健全な社会現象の発展を学ぼうとするなら、歴史をより分析的かつ予測的な科学から学ばなければならない」といっている。難しい提案だが興味をそそる話題である。