政権与党というのは、ときに面妖なことを考えるものだ。そこには驕りに似た姿勢が伺える。文教政策にもそのことがあらわれている。「教員制度改革」を検討しているのが教育再生実行本部。ここでは今、学校の教員免許の「国家資格化」を提言する方針を固めたようである。
その提言とは、大学における教員養成課程を履修した後に国家試験を科し、一定の研修期間を経て免許を取得する内容といわれる。なんとなく医師免許の取得過程を思わせる。一体その意図はなにかというと、教員の資質向上を図るのが狙いのようである。教員の資質や力量が不十分だということらしい。大学の教員養成課程は、設置基準を満たすかどうかが国によって審査されて認定される。さらに修了生に国家資格を与えるという仕組みはどう見ても屋上屋を架すようなものだ。
復習だが、現行制度では教員免許は大学で教員養成課程を修了すれば卒業時に大学が所在する都道府県教育委員会から教員免許が与えられる。そして都道府県や政令都市の教育委員会が実施する採用試験に合格すればその自治体の学校で勤務する。採用試験は教職教養や論文試験のほか、面接、集団討論そして模模擬授業が科せられる。教員採用試験に合格し、採用候補者名簿に登載された者から正規職員になる教諭と年度ごとに雇用契約を結ぶ常勤講師から構成される。このように教師になるには結構、茨の道なのである。
教員の資質や力量に問題があるのかということだが、少子化に伴う学校の統廃合も進んでいるなかで、正規教諭の採用数を抑え、その分を常勤や非常勤講師を恒常的に任用することで人員を補う傾向にある。資質の課題はこうした講師が増加することや専門分野を深める修士課程を経ない教員が多いのが問題なのである。
さらに教員採用試験の問題は文科省と都道府県教委などが共同で作る共通化を教育再生実行会議が提言する方針だともいわれる。教員免許を国家資格にするという意図は不可解なことといわなければならない。
提言で注目すべきことは、スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーを「基幹職員」として学校に常駐させること方針であることだ。多様な授業方法の習得やいじめ、不登校などの課題への対応が求められる中、教員の資質向上と学校のサポート体制を構築するのが狙いである。
教員免許を国家資格とするよりも、ソーシャルワーカとスクールカウンセラを正規職員として常駐させるほうが学校の文化が向上することは間違いない。教員だけの単一集団では発展が期待できない。専門性に溢れる多様な教職員集団ができることは望ましい。中央教育審議会はこうした制度の導入でどのような判断を下すかが注目される。
アメリカ中西部の高校を視察したとき、パトカーが停まり警官が図書館でメールをチェックしているのを見かけました。定期的に学校を見回っているということでした。学校と警察と地域の連携の姿といってもよいのでしょう。