国債には、数多くの種類があります。財務省のWebサイトによれば、大まかに二つの国債があるといわれます。その中でも知られているのが普通国債です。その例は、建設国債、特例国債、復興債、脱炭素成長型経済構造移行債、子ども・子育て支援特例公債、そして借換債です。建設国債とは、財政法第4条第1項にある、公共事業費、出資金及び貸付金の財源を調達するためのものです。特例国債は別名赤字国債と呼ばれ、税などによる歳入が不足すると見込まれる場合に、公共事業費等以外の歳出に充てる財源を調達するものです。例えば、社会保険制度や年金制度で保険で賄えない場合に、赤字国債で補填するといったことです。復興債は、東日本大震災からの復興のための施策に必要な財源のつなぎとして発行されています。子ども・子育て支援特例公債は「子ども・子育て支援法」に基づき、財源を確保するまでのつなぎとして、2024年度から2028年度まで発行されるものです。
借換債は、普通国債の償還にあてる公債です。毎年度多額の国債償還の満期がやってきます。こうした国債のすべてを償還して終わるのではなく、多くは再度国債を発行して借り換えるのです。ここで知っておくべきことは、借換債によって、国の債務が増加するわけではありません。例えとして家計でいえば、借金を返済するために、新たに借金し、前の借金を返すということです。借金額が変わらず長く続くだけのことです。
かつては赤字国債の発行にあたり毎年度、国会の議決で特例法を制定していました。それでは手続きが煩雑で時間がかかるので、2012年度の途中からは複数年度にわたり適用される特例法に基づいて特例公債が発行されるようになりました。現在は、特例公債の発行期間を2021年度から2025年度までの5年間とし、一般会計の歳出の財源にあてています。個人向け国債については、額面1万円から、1万円単位で、新窓販国債については、額面5万円から、5万円単位で購入可能です。国債は、市場で売買される金融商品なので、満期前でも売却し、換金することが可能です。
再度申し上げますが、国債の償還等の経理を行う国債整理基金特別会計では、毎年度多額の国債の満期がやってきます。このとき利払い費を含めて国債のすべてを償還して終わるのではありません。多くは再び国債を発行して借り換えるという措置をとります。これを借換国債といい、通常は借換債と呼ばれています。このように借換債の発行によって、国の債務は借り換えという措置によって、増えることはないのです。
財務省のサイトによれば、日本では、歳出と歳入の乖離が広がり借金が膨らんでおり、受益と負担の均衡がとれていない状況だと言っています。日本経済をオオカミ少年のように「危ないぞ、危ないぞ」と言っているようなものです。現在の世代が自分たちのために財政支出を行えば、これは将来世代に負担を先送りすることになるというのです。これは本当でしょうか。国の借金は国民の借金ではありません。財務省はさらに「社会保障の給付と負担の不均衡状態をはじめ、借金返済の負担が先送りされることで、将来の国民が社会保障や教育など必要なものに使えるお金が減少したり、増税などによって負担が増加する恐れがある」とも言っています。「社会保障の給付と負担の不均衡状態」になるのは、防衛費の増大などによって生まれるのです。
財務省は国の借金について次のように解説しています。
「借金が膨らむと、自由に使えるお金が少なくなってしまい、大きな災害などによって多くのお金が必要となった場合に、すぐに対応できなくなってしまう恐れがあります。」 「国の財政状況の悪化により、国が発行する国債や通貨に対する信認が低下すると、金利が大きく上昇したり、円の価値が暴落して過度な円安になってり、物価が急激に上昇するなどのリスクがあります。」
こうした借金財政に対して、財務省は長らく「税制健全化」ということをうたい文句としています。それは2025年度に国と地方をあわせたプライマリー・バランス(primary balance :PB)を黒字化すること、そして債務残高対GDP比の安定的な引き下げを掲げています。プライマリー・バランスとは、税収や税外収入から国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用などを除いた歳出との収支を表す指標で、「基礎的財政収支」と呼ばれます。つまり、「収入と支出のバランス」のことで、社会保障や公共事業に代表されるような行政が行うサービスにかかる経費を、消費税等の税収で賄えているかどうかを示しています。
PB黒字化の達成のために、増税案などが叫ばれています。政府は2022年末に、防衛力の抜本的な強化のための防衛費増額とその財源確保を決めました。その財源には法人、所得、たばこの3税で2027年度までに1兆円強を賄う増税策が含まれました。しかし、増税を通じた財源確保について、自民党内から予想以上に強い反発が出たため、2022年末の与党税制大綱には、防衛増税の実施を盛り込むことができませんでした。未だに「財源はどうする?」と問うマスコミに対して、言い訳に苦心する政治家、財務省の官僚がいます。そして結局は増税論議になるのです。通貨発行権のある国の政府にお金の制約はないのです。
政府は、自民党内部からの強い反対によって、2024年度には、増税をしないと決め、さらに定額減税実施の方針を決めました。増税による恒久財源確保ができない場合は、防衛費増額を見直しているのです。その場合、赤字国債の発行による防衛費の財源確保の可能性があります。このように国債は、プライマリー・バランスによる「税制健全化」方針の論議にいつも登場する話題です。通貨発行権のある国の政府にお金の制約はないと思うのです。もの・サービスの供給能力が問題であってデフレの中、インフレーションを懸念しては事は始まらないのです。
(投稿日時 2024年10月28日)