お金の価値 その九 バランスシートの意味

 家計の場合、毎週、毎月の家計簿によって、支出が増えたとか預金が減ったとか、を調べることができます。ですが家計簿では、資産がどのくらいで、ローンなどの負債や純資産がどのくらいなのかはわかりません。そこに登場するのが、家計の財務状態がどうなっているかを示すバランスシートとか貸借対照表です。政府や企業の場合、このバランスシートは財務のバランスがとれているかを表す大事な帳簿となります。

 家計に戻って、投資のために銀行から借り入れて貯蓄を増やそうとします。それによって利益を得たとします。借入金があること自体には問題がないのですが、利益に比べて借入金が多い場合は行き詰まり、貯蓄が減ってしまいます。投資信託や株、為替で損をしたという話がこの状態です。株の場合、投資の対象として適しているかを判断する際には、財務の状態がバランスをとれているか否かを調べるのが基本なのです。以下、ある家計のバランスシートの記載例です。

家計のバランスシート

企業のバランスシート

 純資産とは資産と負債の差のことです。借方と貸方の等式を維持するための調整を行う残余変数とされています。このようにバランスシートとは家計簿では分からない家計の財政状況がわかります。企業などの場合はもっともっと複雑で、借方と貸方の区分けは難しいのですが、資産と負債の基本を理解できるならば、特定の企業の株を購入するか否かの判断材料とすることができます。

 資産とは、個人や会社が集めたお金をどのような状態で持っているのかを示します。資産は現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券など、1年以内に現金化することが出来る「流動資産」と、土地、建物、機械など長期間保持する投資有価証券などの「固定資産」とに分けられます。負債とは、返さなければならない個人や会社のお金を表すもので、他人資本とも呼ばれています。負債も資産と同じく、1年以内に返さなければいけない「流動負債」と、1年を超えて返さなければいけない「固定負債」とに分けられます。

ストックとフロー


 
 国には、企業会計における貸借対照表や損益計算書は存在するかという問いですが、財務省において、企業会計の考え方を活用して国全体のフローとストックの財務状況を一覧で開示する「国の財務書類」を作成し公表しています。フローとは、一般家庭の家計においては、ある決まった期間の収入や支出のお金の流れ、 ストックとは、過去からある時点までの蓄積された量のことで、貯金、家や土地などの資産のことを意味します。家計に関してはフローとストックという用語は使いませんが、バランスシートの考え方と応用は役に立ちます。

 最後に、福澤諭吉の「学問のすゝめ」にある一句を紹介します。「もっぱら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり。例えば、いろは47文字を習い、手紙の文言、帳合いの仕方、算盤の稽古、、、、」。福沢の言う「帳合いの仕方」こそが今のバランスシートのことだと思われます。
(投稿日時 2024年10月16日) 成田 滋