お金の価値 その六 電子マネーの普及

 最近、現金を使う機会が少なくなりました。これまでは、銀行や郵便局、コンビニから現金で振り込みをすることが多かったのですが、最近は全くそうした振り込みをしなくて済むようになりました。自宅でパソコンやスマホで決済するのです。買い物もクレジットカードで済ませ、電車やパスに乗るときは全国交通系ICカードを利用します。このカードも残金が少なくなると、紐付けされている口座から自動的にチャージされます。ただ、交通系ICカードはシステム更新に費用がかかるので近々廃止され、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済に取って代わられます。

 現金をデータ化し、電子データをやりとりすることでキャッシュレスで買い物ができるのが電子マネーです。電子マネーはアプリやクレジットカードと紐づけて、キャッシュレスで買い物ができるサービスです。電子マネーは現金での支払いでは得られないお得なポイントがたまるという利点もあり、急速に利用が進んでいます。店のレジにあるリーダーにクレジット・デビット・プリペイドをタッチするだけ。サインも暗証番号も不要なので便利です。

Bit Coin

 最近、ビットコイン(Bitcoin)やペイパル(PayPal)といった「暗号資産」が話題となっています。もともと法令上、「暗号資産」は「仮想通貨」と呼ばれていましたが、現在は「暗号資産」へと呼称が変更されています。基本的なことですが、暗号資産は、中央銀行によって発行された法定通貨ではありません。つまり通貨としての裏付け資産を持っていないのです。円とかドルでの決済には銀行などの第三者が介入しますが、暗号資産は銀行の介入はありません。「交換所」や「取引所」と呼ばれる暗号資産交換業者がいて、入手・換金することができます。こうした業者は、金融庁で登録を受けなければなりません。

 ここで一つの質問です。ビットコインで納税できるのでしょうか。答えはノーです。なぜかというと、暗号通貨は主権通貨でないからです。主権通貨とは、国が、排他的に法的にコントロールする権能を有する通貨のことです。米ドル紙幣の表面には、「この紙幣は公的及び私的なすべての債務に対する法的な支払い手段である」と表記されています。日本銀行券にはこうした但し書きは見当たりません。銀行券は主権通貨として確立しているから言わずもがななのでしょう。

 暗号資産は、法定通貨と同様に物やサービスの対価としてやり取りすることが可能な仕組みとして、高い注目は集めてはいます。利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要なようです。利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にあることを理解する必要があります。私は暗号資産の口座を開いたことはありません。

Credit card in Korea

 ペイパルなどの暗号資産は、基本的に銀行と資金の受取り手の媒介として機能しています。ペイパルのアカウントには銀行口座からの引き落とし、クレジットカードによる前払いによって資金が集められています。このように預金口座はクレジットカードを提供している銀行の背後に存在しているといえます。

 2024年7月に韓国のソウルへ行ったときです。一番驚いたことは電車でもパスでも博物館でも喫茶店でもクレジットカードやデビットカードが使えることです。韓国通貨ウオンを使うことは全くありませんでした。この上もなく便利な旅でした。これまでのような現金による決済は、韓国でもインターネットなどの通信ネットワークを利用しての電子取引に代わっています。注意すべきことは、成りすましでアカウントを不正に利用される可能性があることや、操作ミスによって間違った商品を注文してしまうことなどです。現金決済とは全く違うことに留意したいものではあります。
(投稿日時 2024年10月10日)  成田 滋